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全国に先駆けてインターハイ代替大会実施、1回戦全試合(男女とも)を動画配信決定。佐賀県サッカー協会の決断とは【野田 一成 2種委員長インタビュー】

インターハイの代替大会を全国で先駆けて行う佐賀県。SAGA 2020 SSP杯と名付けられた大会は、このような大会になります。
・3密対策を取ったうえで、可能な限り認める。
・認められなかった競技についてはオンライン配信での対応を検討する。
・徹底的な感染予防に努める。

佐賀県のインターハイは、5月中旬に一度中止になっています。刻々と変わる感染状態、国の意思決定。状況に振り回される形で、一度中止になった大会を開催の方向にひっくり返したのは、選手を取り巻く大人たちの思いでした。

大会が決まるまでにどのような道のりを歩んだのか、なぜ動画配信をしようと考えたのか、この大会を通して伝えたいことを野田 一成 佐賀県サッカー協会2種委員長に伺いました。(取材・文/水下真紀)

野田 一成 2種委員長

佐賀県立鳥栖工業高等学校 教諭
佐賀県サッカー協会 2種委員長

行政の後押しも!
インターハイ代替大会が決まるまでの道のり

ーー全国大会の中止が4月28日。佐賀県のインターハイ中止が決まったのが5月中旬でしたが、そこから6月13日に大会を開催するまでの道のりを教えてください。

野田 一成委員長
全国のインターハイ中止が決まったのが4月25日でした。
都道府県大会は県の裁量に任される部分があったので、佐賀県内はどうするか、といろいろ情報収集していましたが、感染拡大、生徒の安全を守るという観点から中止にせざるを得ないだろうと高体連が中止を決定したのが5月11日だったと思います。通達があったのが5月12日。

代替大会の構想自体はあったのですが、生徒が登校してくるのは5月14日。それまでに各学校へのヒアリングを行って、実際に参加が可能かどうか、確かめましたね。

そのときは開催は非常に難しいという印象でした。

インターハイ佐賀県大会の中止を受けて、サッカー部の引退式を5月中に行う予定だった学校もありました。特に進学校はもう補習や模試の予定がびっちり詰まっていて、動かせない。各学校共に期末考査が行われる時期の問題もありました。生徒が部活中止期間に入ってしまいますからね。

時節柄、大勢で話し合って決められるというわけでもない。ひとつひとつ聞いていくしかない、いろいろな関係者及び関係機関と連絡を取り合うのは実に大変でした。

やりたい、やらせてあげたい、という気持ちはあっても、各学校の方針までを捻じ曲げることはできません。それでも今回の実施にこぎつけたのは、行政の後押しが大きかったのです。

5月19日、県から「やれる種目だけでも代替大会をやろう」という通達がありました。解除前に構想していた大会要綱を何度も確認し、徹底的な感染防止に留意することを踏まえて要綱を提出し、大会開催の運びになったわけです。

大会は、各学校の方針を変えてもらわなければ開催できない部分もあります。それも、佐賀県が教育委員会に働きかけてくれ、教育委員会が各学校に働きかけてくれたおかげで37の加盟校のうち、33校(32チーム)が出場してくれることになった。本当にありがたいことだと思っています。

代替大会の開催まで

5月11日 佐賀県高体連がインターハイ佐賀県大会の中止を発表
5月12日~14日 代替大会の実現に向けて佐賀県内の各校にヒアリング
5月14日 生徒登校開始
5月19日 県が「代替大会をやろう」と決断
5月26日 代替大会要綱提出、発表
6月2日 組み合わせ抽選会
6月13日 1回戦開幕。37の加盟校のうち、32チーム(のべ33校)が出場を表明している

ライブ配信にかける想い…「すべての皆さんの記念に残る大会にしたい」

ーー1回戦のすべての試合に、動画ライブ配信を入れることになりましたね。

野田 一成委員長
大会を開催することになっても、安全のことを考えたら無観客試合に近い形で行うことが妥当となる。そこで、ライブ配信をお願いすることにしました。

はっきりいって、選手たち、とくに高校3年生にとっては、今年は非常にかわいそうな状況です。リーグ戦も、開催はされますが縮小して行います。仕方がないこととは言え、不憫な思いをさせているのは事実だと思います。

今回こういう大会になってしまったけれど、すべての皆さんの記念に残る大会がしたい。各学校にも私のわがままを言わせていただいて、やったことのないことへ挑戦させていただくことにしました。

サッカーはチームスポーツですが、この状況ではチームコンディションさえまだ整えられない高校が多数でしょう。そのなかで頑張る子どもたちを、保護者の方々にもぜひ見せたい。子どもたちの仲間たちにも見てもらいたい。

佐賀県内からだけではなく、県外からお子さんが来ている学校もあります。離れたところにいる関係者の方にも、ぜひ子どもたちの頑張りを見てもらいたいのです。

本来は動画配信は準決勝、決勝ぐらいしかできないかなと考えていました。ですが、高校3年間かけて頑張ってきた思いは1回戦で敗退する高校もすべて同じと考えています。こんな時だから、その想いをぜひ見てもらいたかった。そのため、1回戦で6会場全試合に動画配信を入れたいと思ったのです。

動画ライブ配信

1回戦の全会場全試合(男女とも)で動画ライブ配信をグリーンカードが行います。
3年間努力してきた子どもたちの頑張りをぜひみなさん見てください。

その「新しい一歩」になれたら

ーークラスターなどの心配もあると思いますが。

野田 一成委員長
その心配はあります。いやな話ですが、直前にどこかでクラスターが起きてしまった場合、中止という可能性もある。個人個人の努力も必要な部分ですので、選手の皆さんにもひとりひとりがぜひ感染予防を心がけて、元気で大会を迎えられるようにしてほしいと思っています。

クラスターが出てしまった場合、たたかれると思います。佐賀県も、我々も、この大会自体も。正直、無事に終えられるのかの保証がないから、怖いのも確かです。佐賀県の患者数、発症者数の推移を考えても大丈夫かなと思える半面、残る半分は未知の領域です。どうなるか本当にわからない。

クラスターの可能性を考えていないわけではありません。でも、この大会を目標に、また、きっかけとして、もう一度選手たちが新しい生活に走り出すことができるのではないか、と思っています。

この大会のためにチーム関係者みんなが動いてくれた。県も背中を押してくれた。だから私たちは、この大会を無事に終えて「やって良かった」と言いたい。そのためには、チーム関係者初め、選手にかかわる全員、大会にかかわる全員がきっちり衛生対策に力を注がないといけません。

もしクラスターが出てしまったら、振出しに戻ります。

今、全国みんなが足を踏み出したい状況に置かれていると思うんです。ここで振出しに戻ってしまったら、みんなが踏み出したいその足を一歩戻させてしまうことになる。どうしてもそういう可能性は消せないけれど、それでも子どもたちのために最大限の注意を払って大会を成功させたい。

この短い準備期間の中で、最終的にはこの状況下でも「やろう」と言ってくれた県の存在は大きかった。行政の後押しを受けて非常に心強く思っています。自分たちだけでは「中止」という選択肢しかなかったのに、ここまでやろうという気にさせてくれた行政に感謝しています。

私たちは、全国のさきがけになって「大丈夫だよ、また一緒にやっていこう」という第一歩になりたい。県内外に向けてまたみんなでがんばろうよ、と発信したい。

今まで頑張ってきた選手、その選手をずっと支えてきたご家族、チーム関係者の方々に喜んでもらいたい。その一念でここまでやってきました。

開幕まであと1週間です。
子どもたちの頑張りを形にするために、本当にたくさんの人たちが水面下で動いてくださいました。本当に感謝しています。
選手の皆さんは、コロナ前の1,2月のコンディションに戻りきっていない人が多いでしょう。無理をしすぎてケガをしたりしないように、ということも、感染予防と同様、大きな注意を払ってください。
目前になって中止になることがないように、大会を最後まで無事終えてみんなで喜び合える時まで、みんなで頑張っていきましょう。

SAGA 2020 SSP杯 サッカー競技(男子・女子)公式HP

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最後に

「この大会を目標に、また、きっかけとして、もう一度選手たちが新しい生活に走り出すことができるのではないか、と思っています。」

高校集大成の夏の大会が中止になって、1か月半。頑張ってきた選手たちをもう一度新しい生活に踏み出させるために、尽力してくれた大人たちの思い。そして、準備不足の中ではあるものの、全力でこの大会に臨もうとしている選手たちの思い。

たくさんの人の思いを背負った大会は、6月13日に開幕します。

寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWS統括編集長/事業戦略部水下 真紀
Maki Mizushita
群馬県出身、東京都在住。フリーライターとして地方紙、店舗カタログ、webサイト作成、イベント取材などに携わる。2015年3月からジュニアサッカーNEWSライター、2017年4月から編集長、2019年4月から統括編集長/事業戦略部。2023年1月からメディア部門責任者。ジュニアサッカー応援歴17年。フロンターレサポ(2000年~)

元少年サッカー保護者、今は学生コーチの親となりました。
見守り、応援する立場からは卒業しましたが
今も元保護者たちの懇親会は非常に楽しいです。

お子さんのサッカーがもたらしてくれるたくさんの出会いと悲喜こもごもを
みなさんも楽しんでくださいますように。

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