10年連続で出場している全国高校女子サッカー選手権大会、直近の2019年度大会では堂々のベスト4。
5部編成の東京都高体連女子サッカーリーグではトップリーグに当たるTokyo JK League(2015創設)に所属、優勝2回、準優勝3回を果たす。
2月の東京都高校新人戦決勝では十文字高校に惜敗するも相手チームをせき止める守りの固さ、GKの抜群の反応で、大健闘を見せたことも記憶に新しい。
東京都葛飾区亀有に位置する修徳高校女子サッカー部はその数々の実績から注目度も非常に高く、弊社独自のアクセスランキング、「高校女子サッカー部」部門でも1位を獲得されています。
修徳の強さを創っているのは一体どんなことなのか?
2005年の創部以来、15年目を迎える今日まで一貫して女子サッカー部を指揮する有賀重和監督にお話を伺いました。夢を追う選手達の成長を願い、同じ場所に生まれる毎年違う物語を見つめ続けながら、何がベストなのかを常に考え、追い求める。
「大好きなサッカーを続けて行きたい!」そんなサッカー少女達を応援しくれているようなメッセージがつまっているインタビューです。
(画像提供:修徳高校女子サッカー部 有賀重和監督・文/電話取材:CRANE)
有賀重和監督インタビュー
監督プロフィール
有賀重和監督
保健体育科教諭
2000年 修徳高校サッカー部(男子)コーチ
2004年 修徳高等学校女子サッカー部監督(現職)
女子サッカー部創部より、15年目を迎える今日まで一貫してチームを指揮している。
面談から生まれたオンライン指導
ーーー東京都はコロナウィルス禍の影響が特に深刻でしたが、休校中から今まで、部員の皆さんはどのように過ごしていたのでしょうか?
有賀監督
現在はZOOMなどを使ったオンライントレーニングを取り入れています。
しかし、すぐにこの方法に行きついたという訳ではありませんでした。
3月に最初の休校要請が出てから4月8日までの間、チーム活動は何も出来ない状況でした。
部員達には、この期間をこれまでの自分に向き合ったり、今だから出来ることを探す「自立と自律」の時間に充てたらどうかという話をしていたのですが、ほどなくして休校期間の延長が決まってしまいました。
これ以上、このままで済ませてはいけない。チームにとってもっと具体的に何か出来ることを探さなくてはと、この時から強く思い始めるようになりました。
そこで、3年生を中心に在校生の部員一人ひとりと面談を行い、部員達の考え方や抱えている不安などについて、話を聞くことにしたんです。
部員たちは既に、効果のありそうなトレーニング方法を自分達で見つけ、情報交換をしていました。
「これを部活でも出来ないか?」、「オンラインを使ってみてはどうか?」という思いを持っていることも分かりましたので、保護者の方々にも連絡を取って女子サッカー部としての総意であることを確認し、ZOOMでのトレーニングを導入する運びとなりました。
ーーー部員の皆さん自らが、今だから出来ることを探していたということですね!
有賀監督
こんな状況下でも、部員達がひたむきに前を向こうとしている姿に力強さを感じました。
実は私はSNSにはある種、抵抗のような気持ちを抱いていたんです。
コロナ禍で今のような状況になる前までは、学校で何かが起きた場合、きちんと顔を見ながら話し合いをすることこそが一番良いことだと思っていました。
もちろん、今でもそのことに変わりはないと思っています。しかし、実際にSNSを使ってみたら部員達が今まで以上にどんどん自分のことを話し始めたんです。自分のことをあまり話さなかった部員が本音を語ってくれたり、淡々としているように見えた部員がチームへの深い思いを抱いてくれていたり。オンラインを通して、部員達の新たな一面を見ることが出来たことは、私にとっても大きな収穫でした。
部員達からは、お互いに色々なことを話し合いながら、目標を持って成長しようとしている様子が見えます。
緊急事態宣言は解除されましたが、今はまだ「すぐに今まで通りの練習に戻そう」とはいかない状況です。
コロナウィルスの感染防止に努めることと、ケガのリスクなども考慮しながら少しずつ元に戻していくということになります。
オンライントレーニングは、部員達にとって自分達には居場所があるんだということを再確認できる場になっていると思います。モチベーションの維持に繋がったことで、また新たな段階を迎えても部員達はしっかり対応していってくれると確信しています。
『清楚 勤勉 そして強く』
「誰にでも出来ることにベストを尽くす」
ーーー修徳高校女子サッカー部は10年連続で選手権全国大会に出場され、上位の戦績を残しています。この強さはどのようにして生み出されたのでしょうか。
有賀監督
本校には創部から大切にしているスローガンがあります。
『清楚 勤勉 そして強く』
まずは高校生としてしっかりと社会性を育み、勉強に取り組む。サッカーはその基盤の上にある。
部員達はこのことを理解し、日々懸命にトレーニングに取り組んでいます。
コロナ禍を受ける以前の女子サッカー部ではフィジカルトレーニング、1対1やグループでの技術練習、週に一度外部からコーチを招いてのドリブル練習などで平日のスケジュールを組み、土日の練習試合や公式戦でチームの成果を出す、というように稼働していました。
その中で私が部員達に特に求めていることは、「誰にでも出来ることにベストを尽くす」ということです。
積極的に相手のボールを奪いに行く、セカンドボールを常に狙っておく、ボールを取られたら取り返す、スペースが空いていたら埋めに行く…これらのことは、サッカーをする上で、誰にでも出来ることであると同時に、難しいことでもあります。トレーニングであっても、公式戦であっても、いつも同じ熱量で向き合い、しっかり対応することが出来る選手になって欲しいという思いで指導にあたっています。
「100-1=0」だということを私は部員達によく話しています。
めまぐるしく変わるサッカーの試合の局面で、少しでも手を抜いてしまったら…それはすぐに失点に繋がってしまいます。ミスをするなということではありません。一生懸命やっていても、ミスすることなんてたくさんある。ミスしたらすぐに対応して挽回すればいいんです。
「出来る」ことが大事なのではなく、「やろうとする」ことが大事なのではないでしょうか。
このことは社会に出て仕事を持つようになってからも必要になってくることです。
100回あることを、100回ともしっかり対応出来る。それこそが信頼に繋がる第一歩だと思っています。
チャンスに備え、努力を積み上げる
ーーー2020年度は本来であれば選手達が活躍出来たはずの場所が次々に中止を余儀なくされています。
有賀監督
とても辛いことですが、インターハイは中止になってしまい、Tokyo JK Leagueもどうなるのか今はまだ分かりません。しかし、今は全国で、スポーツをはじめとするあらゆることがままならない状況ですよね。みんなが辛い状況に立たされていると思います。
部員達には、いつチャンスが来てもいいように一日一日を充実させていこう、努力してきて良かったと自分でジャッジできるように、自分が納得できるように、それが一番大切で一番成長できることなんだよ、ということを話しています。
子供たちの一年は私たちの一年とは全く違います。私たちが「また来年がある」と思えることは子供たちにとってはとても大きな、人生でたった一度のことだと思うんです。成長の機会が失われてしまったことは本当に辛いことだと思うし、落ち込むのは当然のことです。しかし、その一方で、私たち大人が困り果て、悩みぬいている間にも、子供たちははるかにその上を行くほど成長していることも確かなことです。
慎重に状況を見ながらにはなりますが、部員達が懸命に積み上げてきたことが何かの形で発揮できるよう、模索し続けて行くことが大切なことなのではないかと感じています。少しずつではあっても、確実に前に進めて行ければと思っています。
ーーー高校3年生の部員の皆さんは進路も心配されていることと思います。
有賀監督
3年生の進路指導は、特に重きを置いて体制を整えて行きたい点です。本来なら学校で進路指導を行いたいところでしたが難しい状況でしたので、部報を活用することにしました。4月14日から現在(6月5日)までのサッカーに対する考え方やコロナ禍で社会が受けた影響などを記載し、部員たちに配布しています。
コロナ禍における社会の情報については部員達も自分で調べるなどして情報は得ているとは思いましたが、進路を考える上で活用できる具体的な情報を共有したいと思っています。
部報の発行は創部当初より行っていることで、今号で第100号になりました。
2021年度、求めるは修徳でサッカーがしたいという思い
ーーー修徳高校サッカー部にはどうすれば入れますか?例年はセレクションを行ってきたのでしょうか?
有賀監督
本校はセレクションは一切行っていません。例年、体験練習会という形での開催をしています。
本校でサッカーをする条件はただ一つ。「修徳でサッカーがしたい」という強い思い。これだけです。
ーーーセレクションはしないのですね!これはとても意外でした。
有賀監督
選手権全国大会の上位まで行く高校で、世代別代表がいないのはうちくらいかもしれませんね(笑)。こういうチームだからこそ、日本一が取れたら面白いんじゃないかな、と思っています。
「サッカーが好きでとても楽しい。」
選手達がきついトレーニングをこなしていけるのもこの思いが根底にあるからだと思います。私はその思いを大切にして行きたいので、セレクションやスカウトは行わず、修徳でサッカーをしたいと強く望む選手なら、基本、誰にでも門戸を開いています。
サッカーが好きで、努力していきたいと思う選手達に高い目標を与え、思考をMAXまで引き出す、想像力を高める。それが私たち指導者に出来ることではないでしょうか。
ーーー高校でもサッカーを頑張りたいという女子選手にとって、これはとても嬉しい情報だと思います。コロナウィルスの状況を見ながら、なんとか体験練習会を開催出来るようになって欲しいですね。
有賀監督
これはまだ構想の段階に過ぎませんが、オンラインでプレーを見るとか、そういうこともやっていけたら良いのではないかと思っています。
やり方についてはまだ検討を重ねなければいけないと思いますが、入学を強く希望される選手からプレー動画を送ってもらうということも出来ないことではないかもしれませんね。
体験練習会については今ははっきりしたことが申し上げられないのですが、コロナウィルスの状況を見ながら検討し、学校HPなどを通して皆様にお知らせ出来たらと思っています。
修徳高校女子サッカー部データ
監督:有賀重和
部長:市丸章
副部長:榎本光一朗
コーチ:森村友紀
トレーナー:横山賢太郎(外部コーチ)
2020年度 部員数
3年生16人、2年生18人、1年生12人
2020年6月現在
過去の戦績(3年間)
2019年度
第20回東京都高校女子サッカー 新人戦大会 準優勝
Tokyo JK League 2019 準優勝(参照:東京都高校女子サッカー)
第28回全日本高校女子サッカー選手権大会 ベスト4
第28回関東高校女子サッカー選手権大会 準優勝
第28回全日本高校女子サッカー選手権大会 東京都予選 準優勝
第20回東京都高等学校総合体育大会(女子) 第3位
2018年度
第19回東京都高校女子サッカー 新人戦大会 第3位(参照:東京都高校女子サッカー)
Tokyo JK League 2018 優勝(参照:東京都高校女子サッカー)
第27回全日本高校女子サッカー選手権大会 2回戦進出
第27回関東高校女子サッカー選手権大会 優勝(2連覇)
第27回全日本高校女子サッカー選手権大会 東京都予選 準優勝
第19回東京都高等学校総合体育大会(女子) 準優勝
2017年度
第18回東京都高校女子サッカー 新人戦大会 優勝(参照:東京都高校女子サッカー)
Tokyo JK League 2017 優勝(参照:東京都高校女子サッカー)
第26回全日本高校女子サッカー選手権大会 ベスト8
第26回関東高校女子サッカー選手権大会 優勝
第26回全日本高校女子サッカー選手権大会 東京都予選 優勝
第18回東京都高等学校総合体育大会(女子) 準優勝(参照:東京都高校女子サッカー)
最後に
有賀監督のお話には、選手達への深く、暖かい思いが溢れていました。
穏やかで優しい口調の中に時折滲ませる指揮官としての厳しさは、選手達への深い信頼があればこそなのだと思います。
サッカー少女達の夢の根底には「サッカーが好きだ」という思いがあり、このシンプルな動機こそが選手達を奮い立たせ、更なる高みへ向かう力をくれるのものなのではないでしょうか。この気持ちをいつまでも持ち続けていられるようなサッカー進路を選んで欲しい、そんな風に感じるインタビューでした。
貴重な機会を本当にありがとうございました。
コロナウィルスの一日も早い終息と、修徳高校女子サッカー部の皆さんが情熱をかけてサッカーに向き合える日が戻ってくることを切に願い、応援しています。
関連記事
「選手達に全力で向き合っていきたい」 新生日ノ本・掲げるは「自立と前進」【日ノ本学園女子サッカー部 新監督 村上裕子氏インタビュー】
1年生13人いると思いますよ。
匿名様
サッカー部のデータにつきましては、インタビュー当時の学校からの情報を掲載しています。
情報ありがとうございました。