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基礎を磨き「個」の最大化目指す 全国大会常連校・星槎国際湘南女子サッカー部 柄澤俊介監督インタビュー

画像引用:星槎国際湘南HP

2018年度高校女子サッカー選手権全国大会では創部5年目で全国優勝という史上最速の偉業を達成。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属の宮澤ひなた選手を輩出したことでも知られる神奈川の強豪、星槎国際高校湘南女子サッカー部

数々の実績の土台にはどんな指導があったのか。
柄澤俊介総監督にお話を伺いました。

柄澤監督の真摯な言葉には、厳しくも優しい、選手への深い思いが溢れていました。
常に開かれた心と柔軟な思考だからこそ届く指導がある。選手の皆さんの高い目標へのひたむきな努力、成長したいと願う心をしっかりと受け止めて育成していく。

個の能力の成長を願う柄澤監督は指導のどこに重点を置いているのか? 高校でもサッカーをしたい中学生にもぜひ読んで欲しいインタビューです。

(文/電話取材:CRANE)

本文は写真の下から始まります。

柄澤俊介監督インタビュー

プロフィール

柄澤俊介監督
サッカー部顧問(総監督)
資格:JFA公認A級ジェネラルコーチ

基礎を磨き、個を最大化する

画像引用:星槎国際高校湘南女子サッカー部facebook

ーーー創部された2014年に最初の全国大会出場を決めたということにまず驚きました。2018年度の選手権全国制覇他、数々の実績を収めた星槎国際湘南女子サッカー部では、どんな指導を行っているのでしょうか?

柄澤監督
チームも選手達もまだまだ目標の途中にいますが、星槎国際湘南女子サッカー部では世界のトップレベルで戦える個人の技術・戦術能力を伸ばして欲しいという思いで指導に当たっています。トレーニングや試合では、すべてのプレーは効率的にゴールを奪うために行う「サッカーの原理・原則」に従って「攻」・「守」・「攻守の切り替え」の局面において最適な選択をするということを常に要求しています。

判断は良くても技術が足りない選手、技術が高くてもチームの為になるプレーが選択できない選手では、レベルが上がると試合で通用しなくなります。状況に応じた判断を具現化できるよう、止める、蹴る、運ぶなどの基本練習も徹底して行います。

ーーー個人の成長を目指すことが指導の基盤なのですね。試合での戦い方も「個」の力がベースになっているのでしょうか

柄澤監督
サッカーで次のステージに行くことも考えて、「個」を最大化することを目指しています。ですが、高校生はまだまだ能力を伸ばしている段階なので、チーム戦術に選手をはめ込むことは星槎ではしていません。
個人戦術、ゴールを奪う局面でそのプレーに関わる数名が共有する「グループ戦術」までが戦い方のベースになります。

その選手がどこまで見えているのか?「自分の状況」だけでの判断から「チームとして必要な判断」にレベルを上げて行くことが大切です。

例えば、ゴールからより近い所でフリーでボールを受けようとする選手が見えて、その選手にパスを出す。通るかもしれないけど通らないこともある。サッカーは一瞬で状況が変わるので次に起こることも考えて判断しなくてはなりません。あと一歩及ばずゴールが奪えなくても意図のあるチャレンジならグッド、相手の寄せが早くてボールを奪われそうな場面なら無理して前に出さないこともグッドということになります。

プロサッカー選手は、そのチームの監督が採用する戦術を具現化できるようにならなくてはなりません。

基礎技術が高く、個人戦術がしっかりついている選手はどんなチーム戦術にも対応することができ、監督やチームからも信頼されるのではないでしょうか。

勝利という説得力

画像引用:星槎国際高校湘南女子サッカー部facebook

ーーー試合を見ると、選手一人ひとりの技術がとても高いですね。戦う上でこの技術力も生かされているように思います。

柄澤監督
ありがとうございます。どの試合を見たかによっても評価が変わりそうですが(笑)

星槎では「ボールを動かすサッカー」をしています。しかし、ボールを動かすということは選手に自信が無いと出来ないことなんです。例え高い技術力があったとしても、自信が無ければ判断に迷いが出るからです。

自信をつけるためには、まず勝つことを目指したい。勝つことで自分達がボールを動かすサッカーをしているということに「説得力」が生まれます。そしてその説得力がチームを「強さ」に導いてくれます。

ーーー勝つことで「説得力」が生まれる!この言葉にこそ説得力を感じました。確かに強くなるためには「勝利」も重要なファクターになりますね。

柄澤監督
もちろん、勝利至上主義ということではありません。
しかし「自分達はボールを動かすサッカーをしています。でも勝てません。」では何のために時間を割いてこれをやっているのかわかりません。それでは、トレーニングに対するモチベーションが保てなくなる。

勝つことで自分達がやってきたことを信じることが出来ます。
自信をつけることで選手達に更に高い所でチャレンジする気持ちが生まれる。

全国大会となると一回戦から難しい戦いになり、決勝に近づくほど一戦、一戦の緊張感が増していきます。
選手達にはより高い緊張感の中での試合を経験してもらいたい。勝てる試合を勝ち切って、決勝に近づけるよう、日々のトレーニングから全力で頑張って欲しいと思っています。

人に支えられ、やがて支える人になる

画像引用:星槎国際高校湘南女子サッカー部facebook

ーーーレイアFC※と高校サッカー部とはどんな連携を取っているのでしょう?

柄澤監督
高校サッカー部からセレクトされた数名の選手がレイアのトップチームの試合に帯同しています。部活終了後にあるトップチームのナイター練習にも参加しています。

ーーーレイアから入学した選手は柄澤監督が結果として中・高一貫で指導することになりますね。外部からの選手も入学してきて、大勢の女子部員をまとめていらっしゃいますが…男子と女子の指導に違いはありますか?

柄澤監督
私は元々、男子チームの指導をしていたのですが、サッカーの原理・原則に則った指導法という意味では基本、女子も変わりはありません。

ただ、伝え方は男女でやはり違いがあると思うのでそこは意識します。距離を詰めるところと、離れるところのバランスと伝え方のメリハリは選手達のその日の状態によって変えるようにしています。選手達がしっかり考えてやろうとしている時は私からは特に何も言わなくても大丈夫ですからね。

中学時にレイアだった選手と外部入学の選手に差はありますかと聞かれることもありますが、出身チームでどうこうというよりはその選手の実力がどうかということだけです。もちろん高校以上のカテゴリーで通用する選手を育てるつもりでジュニアユースの指導をしていますので、特に技術面のレベルはそこそこあるとは思います。チームとしては全く結果が出ていませんが(笑)

大事なのは目の前の選手を見て課題を与え続けること、それだけです。前所属チームによって特徴のある指導を受けてきていますので、その良さはなくさないようにしていきたいですね。

ーーー寮生と通学生の割合はどのくらいでしょうか?寮生のケアなどはどうしていますか?

柄澤監督
女子サッカー専攻科の殆どは通学生になります。寮生は一学年、1/3いるか、いないかというくらいですね。

共同生活の場は、人と人との関わり合いを学べる場になっているのかなと思いますね。

今この場所でサッカー出来ているのは、先生方や部のスタッフ、保護者の方々、地域の方々など関わってくれる全ての人に支えてもらっているおかげです。サッカーだけが上手くなっても、お世話になっている方々への感謝の気持ちや謙虚な姿勢が持てなければ人としての成長が止まってしまいます。

人に支えてもらったからこそ、今度は自分が誰かの支えになれないだろうか?こういう思いを持ち続ければサッカー選手としてもっと高い場所に行けると思います。

SEISA OSAレイア湘南FC 
星槎国際高校湘南女子サッカー専攻科創立のルーツとなった女子サッカークラブ。
2008年、6人の選手の「サッカーの試合がしたい」という声から生まれた女子中学生を対象としたサッカースクールが5年の活動を経て、2013年に星槎グループと出会い、生まれ変わりました。
現在は、U-15、レディースのトップチームが活動中。

2021年度新入生募集について

画像引用:星槎国際高校湘南女子サッカー部facebook

ーーー2021年度、新たに「星槎の一員」として、どんな選手に来て欲しいですか?

柄澤監督
成長したいと強く思う選手です。
星槎でサッカーがしたいという迷いのない強い気持ちとやわらかい思考を持っているとよりいいと思います。高校からはより、チームの勝利を考えたプレーが求められます。サッカーは同じように見える局面でも少しでも違えば選択肢が変わります。中学までのサッカー観を一度クリアにしてもらえたらいいですね。

ーーー技術を確認するための体験練習や、セレクションがあるのでしょうか?

柄澤監督
セレクションは行っていません。人数は、学校として受け入れるキャパシティが決まっているので10人前後と上限はありますが、決してサッカーの技術の高さだけで決まるものではありません。

体験練習については今、新型コロナウィルスの影響でまだ決まっていない状態なのですが、学校再開後、恐らく個別での対応になると思います。ご興味のある方はぜひ、個別にお問合せください。

ーーーセレクションが無いというのは意外でした。経験者だけではなく、高校からサッカーを始めたいという選手でも受け入れているのでしょうか?

柄澤監督
はい。実際に、高校からサッカーを始めたいという選手を受け入れたことがあります。

ただ、全国大会出場チームとして、維持していかなくてはならない目標がありますし、人としても成長してもらうために選手達に求めることも少なくありません。その選手は相当の覚悟を持って入学し、3年間やり遂げてくれました。
本人の強い意志、保護者の方のご理解にはこちらも全力でそれに答えたい、何かを残してあげたいという思いで指導に当たっています。

どんな競技にも言えることですが、決して甘い世界ではないということを分かって頂いたうえで、3年間やり遂げられる覚悟を持って入学して欲しいです。

星槎高校サッカー部データ

画像引用:星槎国際高校湘南女子サッカー部facebook

指導スタッフ

マイスター:奥寺康彦
JFA公認S級コーチ
2012年8月 日本サッカー殿堂入り
1970年代当時、世界最高峰のリーグ、ドイツのブンデスリーガで活躍した初めての日本人選手。
ドイツの3クラブで計9年間プレーを続けレギュラーとして実績を残した。その正確無比の安定したプレースタイルでドイツのファンから「東洋のコンピューター」というニックネームで呼ばれた。

テクニカルアドバイザー:リトバルスキー
JFA公認S級コーチ
元ドイツ代表
W杯優勝経験あり

アドバイザー:本木 幹雄
元神奈川県サッカー協会 会長

アドバイザー:城 啓二
神奈川県サッカー協会 副会長

顧問(総監督):柄澤 俊介
JFA公認A級ジェネラルコーチ

顧問(コーチ):金野 可奈
JFA公認B級コーチ

コーチ:奥田 星佳
JFA公認C級コーチ

引用:星槎国際湘南HP

2020年度 部員数

3年生11人、2年生12人、1年生8人
内、寮生11人

過去の戦績(3年間)

2019年度
第26回 神奈川県高校女子サッカー新人大会 優勝(4連覇)
第28回全日本高校女子サッカー選手権大会 2回戦進出
第28回関東高校女子サッカー選手権大会 第3位
第28回 神奈川県高校女子サッカー選手権大会 優勝(3連覇)
第8回 神奈川県高校総合体育大会 女子サッカー大会 準優勝

2018年度
第25回神奈川県高校女子サッカー新人大会 優勝
第27回全日本高校女子サッカー選手権大会 優勝(史上最速の創部5年目)
第27回関東高校女子サッカー選手権大会 第3位
第27回 神奈川県高校女子サッカー選手権大会 優勝(2連覇)
全国高等学校総合体育大会女子サッカー競技 (インターハイ) 1回戦出場
第7回関東高等学校女子サッカー大会 準優勝
第7回 神奈川県高校総合体育大会 女子サッカー大会 優勝

2017年度
第24回 神奈川県高校女子サッカー新人大会 優勝
第26回全日本高等学校女子サッカー選手権大会 1回戦出場
第26回関東高校女子サッカー選手権大会  準優勝
第26回 神奈川県高校女子サッカー選手権大会 優勝
全国高等学校総合体育大会女子サッカー競技(インターハイ) 第3位
第6回 関東高等学校女子サッカー大会 優勝(参照:一般社団法人 関東サッカー協会
第6回 神奈川県高校総合体育大会 女子サッカー大会 優勝

最後に

サッカーには原理・原則がある。それに従って基礎技術を徹底的に磨いて判断力を上げて行くこと。選手の成長を願い、求めること、続けること、そして諦めないこと。

選手のことを思えばこその真摯な指導には、時に耳に痛い言葉もあるでしょう。しかし、それは確実に心に刺さり、やがて心の中にある弱さを溶かしていくものなのではないでしょうか?

柄澤監督のお話からは、厳しさに耳を塞がず、ひたむきにサッカーに向き合うことで日々新しい自分に出会う選手達の眩しい姿が見えるような気がしました。

貴重なお話を本当にありがとうございました。
1日も早くコロナ禍が収束し、選手達の笑顔と躍動の日々が戻ること、星槎国際高校湘南女子サッカー部の今後ますますのご発展をお祈りしています。

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寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWSテクニカルマイスターWriterCrane
滋賀県在住ライターのCraneと申します。
2022年8月にライター歴5年目に突入、サッカー娘の母歴は丸12年になりました。

どんな試合でも、その一戦を迎えるまでにどれほどの努力があったのか。そしてそこに、どれほどの方の支えがあったのか。

頑張っている選手達、それを支える保護者、指導者の皆様が持つ数多のドラマに想像を張り巡らせてはリスペクトが泉のように湧き上がる日々。
涙腺も年々緩くなり、留まることを知りません。

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