(この記事は再掲です)
2020年2月28日の安倍首相の「休校要請」で始まった小中高校生の長いお休み期間は、そのまま春休みにつながり、丸1カ月以上学校生活が中断されることを余儀なくされています。(2020年3月17日現在)
それに伴い、部活動やサッカーチームの練習・大会・遠征・合宿などが軒並み自粛になりました。
既に部活動の再開が4月の始業式以降ということが決定している都道府県もあり、1カ月という長い期間サッカーの練習を休むことに不安を感じている選手や保護者、指導者の皆さんも多いのではないでしょうか?
そこで、ジュニアサッカーNEWSでは、2018年7月の西日本豪雨災害で大きな被害を受け、1カ月に渡って部活動を行えなかった広島の県立高校サッカー部吉年利聖監督に、お休み期間の捉え方、影響、スムーズに復帰するためにというテーマでお話しをお聞きしました。
「1カ月もサッカーの練習から遠ざかっていて大丈夫なの?」という不安を抱える選手・保護者の皆さんの不安払しょくの一助になればと思います。
お話を伺った方
広島県立広島観音高校サッカー部
吉年利聖監督
2018年7月の西日本豪雨災害時は広島県立広高等学校のサッカー部監督を務める。
(写真は2月22日の試合風景です。広島観音高校サッカー部Official Twitterより)
1か月サッカーの練習がない、影響は?
ーーー2018年の7月に西日本豪雨災害があった際は、サッカー部の練習がストップしたとお伺いしました。
どのような様子でしたか?
吉年監督
西日本豪雨災害の時は、呉の広島県立広高等学校に赴任していました。
道路が寸断されて、僕が毎日通勤で通っている道路がぐしゃぐしゃになって。
本当にあと数時間ズレていたら、僕もその道路で土砂崩れに巻き込まれていたかもしれません。
交通機関もストップして、当然部活などはできる状況ではありませんでした。
選手の家が土砂で埋まって、部員で土砂を取り除きに行くこともありました。
正式なサッカー部としての活動は1カ月くらいはできませんでした。
ーーー1カ月ほど通常の部活動ができない状況だったのですね。
その後、部活動が再開されてからの影響などはありましたか?
吉年監督
8月にチームの練習を再開してからは、やはり体を戻すのに時間がかかりましたね。
サッカーというスポーツの場合は、対人の練習で強度を上げていくという一面があるので。
具体的にはこんな影響がありました。
・サッカーに向かう熱量、大会へ向かう熱意が低下。
・練習に対するモチベーションが低下。
・試合中もどこか元気がない。
ーーーこうしてみると、意外とメンタル面での影響が大きいように感じますね。
吉年監督
そうなんです。
世の中も自粛ムード一色で、身近に被害にあった親戚や友達がいるので、元気よく練習することにためらいの気持ちもあったのかもしれません。
試合をしても、どこかおとなしかったです。
全然いつもと違う雰囲気でしたね。
いつもの感じが取り戻せなくて、部活再開1カ月後に行われた選手権の県予選は全然ダメでした。
ーーー現在、新型コロナの感染拡大予防のための休校はいつまでの予定ですか?学校再開、部活動再開までに、広島観音高校サッカー部ではどのように過ごしているのですか?
吉年監督
部活は広島の公立高校の場合、4月6日の始業式までは中止です。
2月28日から部活動休みになりましたから、丸々1カ月以上は休みになります。
その間、サッカー部のトレーナーが考えた体幹トレーニングや一人でできるようなトレーニングを動画で撮って、参考にするように選手たちに渡しています。
(写真は2月上旬のトレーニング風景です。本文には関係ありません。広島観音高校サッカー部Official Twitterより)
1か月自転車に乗らなかったら自転車に乗れなくなることなんてない。
サッカーも同じ
ーーー吉年監督は選手たちにこの部活休止期間をどうとらえて欲しいですか?
「部活ができない、ヤバイヤバイ」と思っても仕方ないので、ポジティブに今、何ができるかを考えて欲しいですね。
例えばうちのサッカー部だと、新人戦でケガをした選手が8人くらいいるんです。
選手は休めと言っても、なかなかしっかり休んでくれないこともあります。
でも、今年は春休みにサッカー部の活動ができない環境になった。
僕は、強制的に休んで身体を整えられる期間になったとポジティブにとらえていますよ笑
4月から万全の状態で、一気にいけるように今を過ごすという発想です。
身体のケアに充てるリセット期間ということで。
ーーー「スポーツは1日休むと取り戻すのに3日掛かる」などと耳にすることもあって、こんなに長期で休んでしまって、大丈夫だろうか?と不安になっている小中高校生もいると思うのですが、これについてはどうお考えですか?
選手は焦りしかないと思いますよ。
特に新高校3年生の選手たちは。
でも、僕は「1カ月乗らなかったからといって、自転車が乗れなくなるか?そんなことないだろう。サッカーも同じ」と考えています。
確かに強度の部分で、対人の練習を1カ月できなかったら試合中の体力という面では落ちることは考えられますが、サッカーの技術やテクニックの面では、そんなに心配することはないと思います。
ーーーそうなんですね。ヨーロッパでは夏休みにしっかり休んだりすることも推奨されていますしね。では、学校が再開されて、部活が始まってから、少しでも早く休校前の感覚を取り戻せるようにするには、何を意識してすごすと良いでしょうか?
吉年監督
広島県では4月6日に始業式と共に休校が終わります。ここから学校生活が一気に始まるわけです。
その時、スムーズに開始できるよう、生活のリズムをいつもどうりに整えておく。リズムを崩さない。
これが一番重要なことです。
広島県では4月からインターハイ地区予選が始まるんです。
広島観音は新人戦がベスト4だったので地区予選は免除になりますが、早いところでは4月18,19日からインターハイの地区予選が始まります。
学校生活が始まって、サッカーの練習も同時に始まって、生活がドタバタしますよね。
ここで、スムーズに活動を再開できるように、生活リズムを整えておくことだと思います。
例えば、午前中身体を動かして、午後から勉強をするとか。
朝練もなくなって早起きの習慣がなくなってしまうと、学校が始まってからもペースを取り戻すのに時間がかかってしまいます。
特に新3年生は受験に向けての生活も始まります。
勉強、生活のリズムを休みの間に崩さないことが、部活動再開の後にサッカーを思い切りやるためにも、一番大事な事になってくると思います。
ーーーなるほど、日常生活を疎かにしていては、周り廻ってサッカーに支障が出る、というわけですね。
吉年監督
はい、日常生活のリズムを崩さないというのが、一番大事で一番難しいことですね。
ーーー吉年監督はもし、ご自身が今学生だったら、どんな風にすごしているでしょうか?
吉年監督
ピンチはチャンス、周りに差をつけるチャンスととらえていると思います。
今が周囲のライバルに差をつける時だなと。
あと、僕が学生だったらサッカーについての本を読みますね。
こういう余白の時間でできること、将来について役に立つことを積極的にやっていると思います。
ーーーピンチはチャンス!今、まさにこの言葉が一番勇気づけられます。サッカーができなくて、不安な気持ちを抱えている選手の皆さんが少しでもポジティブに考えて、前向きに日々を過ごせると良いですね!本日はお忙しい中、ありがとうございました!
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