故障をしやすい子供の4つの特徴と故障をしにくくするための方法
photo:Richard Hurd
まず、故障をしやすい体と、しにくい体があることを理解してください。同じ負荷の練習をしているのに故障をしがちな子は、必ず特徴があります。
家庭でできるチェックをあげてみました。
ぜひ、やってみてください。
■まっすぐ立てている?
お子さんを連れてきて、「まっすぐ立って」と言います。
立てたようなら、「深呼吸を3回」してもらいます。
このとき、お子さんの肩をよく見てください。
できました?
肩が上に上がったり、体が反ったりする
これは、「まっすぐ立てていない」証拠です。これは大変問題だと思うのですが、学校の体育で深呼吸を「肩をあげたり、大きく反ったり」と教えている場合があるのです。
なぜかというと、こうしないと「やっているのかいないのか、わからない」からです。あくまで「先生から見たときに」という視点ですが。
ご自身でやっていただくとわかると思いますが、肩をあげたり、大きく反ったりすると、肺の厚みは薄くなります。ろっ骨が上に上がりますので、バランスを取るために、反ったりしなければなりません。
その姿勢から元に戻った姿勢を、よい姿勢と教えている先生方がたくさんいるのが現状です。しかし、この姿勢を横から見ると、胸を張った姿勢になって、腰のあたりが少し反り気味なのがわかっていただけると思います。
これは、スポーツをすると、体のあちこちに負担をかける姿勢です。重心も定まりませんし、センターも通りません。
正しい姿勢は、深呼吸をしたときに
・肩の高さがあまり変わらない、体も動かない
姿勢です。重心が体の下のほうに固定されます。
正しい姿勢を子供に覚えさせるには、
・深呼吸した時に、頭のてっぺんが引っ張られている感じを想像させる(実際、頭頂部の髪を軽くつまんであげると、うまくイメージできるようです)
・そのまままっすぐおろす
をしてみてください。正しい姿勢を筋肉に覚えさせれば、簡単に転ぶことがなくなります。また、余分な負荷が体にかかることも減りますので、故障が減ります。
■足を見てみましょう
短パンをはかせて立たせてみてください。ここで注目したいのは、膝です。
膝の間が指2本分以上離れている
これを、内反膝(ないはんひざ)傾向と言います。いわゆるO脚といわれているものです。通常の生活には全く支障がありません。激しい動きを繰り返すサッカーのようなスポーツでは、膝や股関節に負担をかけ、障害につながることがあります。
また、この状態でどちらかの足、または両足のふくらはぎのほうが弓状に曲がっているように見える場合、脛骨内反(けいこつないはん)の可能性があります。
こちらは、スポーツ障害に結びつきやすいだけでなく、中高年になってからの変形性膝関節症に深い関連があります。注意が必要です。
膝を付けた時、足どうしが指2本分以上離れている
外反膝(がいはんひざ)と言います。いわゆるX脚です。こちらも同じく、膝や股関節の障害につながります。
足の細さが違う
「利き足のほうが筋肉がついているんだから、当然でしょう?」と言わないでください。
スポーツ障害を抱えている足は、細くなります。ジュニア選手の段階で、見てわかるほど細さに違いがあるようなら、早く病院を受診させてください
故障のリハビリについて
病院の指導に従うのは当然ですが、次の故障に結びつきにくい体を作る必要があります。
足のトラブルは、早めに医師に相談しましょう。特にサッカーは、足が勝負のスポーツです。
■家庭でできる体作り
家庭でできる方法としては、
「1日10分でもいいから、いつも使っている利き足、利き手の反対を使う」ことを心がけてみてください。筋肉の偏りも防ぎます。
サッカーの場合は、ボールをけるのも左右交互にしたり、利き足で20分練習したら、5分は反対のほうの足で練習することが故障の軽減につながります。プレーの幅が広がることにもなります。
そして、まっすぐ立つことを体に覚えさせることです。実際に、正しい姿勢を覚え、正しい飛び方を覚えた瞬間、セットプレイのときにも使うジャンプが4センチ伸びたジュニア選手を見たことがあります。
身長は155cmくらいの選手のジャンプが4cmのびることは、175cmの大人に換算すると、5.25cmジャンプが伸びること。小指1本分ジャンプが伸びるのです。筋力トレーニングは行わないでこれだけ伸びるのですから、いかに正しい姿勢が大切かがわかります。
■食事のサポート
ジュニア選手への故障しない体作りのための欠かせないアプローチ。それが、食事です。
筋肉を作るためのタンパク質、体の回復を高めるビタミン類、関節を動かすための脂肪分、エネルギー源になる炭水化物の摂取はもちろんですが、サッカー選手なら、必ずとってもらいたい栄養素があります。
鉄です。
走ったり、ジャンプするたびに、足の裏の赤血球が壊れるのは、ランナーの世界ではもはや常識です。足だけではなく、どこかがぶつかったりするたびに、子どもでも赤血球はどんどん壊れていきます。
鉄をしっかりとることは、赤血球を増やすこと。赤血球が増えれば、体の中にためておける酸素量が増えます。その結果、息切れしにくくなる、スタミナもついてくるという嬉しいおまけつきです。
ぜひ、ジュニア選手の体調管理にも、鉄分を取り入れてください。
なお、サプリメントはあくまで食事の補助として使います。この時期に、実際に食物から消化吸収させないことは、一生を通してみた時に重要な消化吸収の機能を怠けさせてしまうことにもつながります。
プロテインなども、あくまで食事の補助として。使うのは悪いことではありませんが、「プロテインが食事代わり」ということは避けてください。
スポーツドクターのすすめ
サッカーに限らず、長く、本気でスポーツを続けていくつもりなら、ジュニアの段階から、スポーツドクターをきちんとつけることをおすすめします。
ご存知の方も多いと思いますが、日本のスポーツ医の資格は3つあります。
■日本体育協会公認スポーツドクター
競技スポーツ選手に対する診断、治療、メディカルチェックを担当します。
■日本医師会認定スポーツ医
健康スポーツのための指導や処方、運動可否の評価を担当します。
■日本整形外科学会認定スポーツ医
スポーツによって発生するケガの診断や治療を担当しています。膝の専門家、肩の専門家など、専門分野に分かれています。
ジュニアサッカー選手がお世話になるのは、日本整形外科学会認定スポーツ医の方々です。
が、ジュニアサッカー選手が本当に身近にお世話になるのは、ちょっとした不調を訴えることができ、適切なケアをしてくれるお医者さんだと思います。
選ぶポイントとしては、
・駅から自分の家への帰り道の途中にある
・お医者さん自身が何らかのスポーツをしていた、している
・お母さんたちの口コミ
が重要となります。
駅からの帰り道、という点については、「長く通う」ということを視野に入れた選び方です。ジュニア年代で医師の必要は終わり、ではありません。
これから長く続くスポーツ生活を考えたときに、小さいころから自分を見てくれているドクターの存在は、大変重要なのです。
小学校年代、中学校年代にはピンと来ないかもしれませんが、電車通学になった高校生年代も、かなり故障の多い年代です。家までの帰り道に、寄ってから帰ってこられることが非常にリハビリや治療の役に立ちます。
また、スポーツドクターは、大々的に宣伝をしている人は少ないのも特徴です。先輩保護者たちに、ぜひ情報収集をしてみてください。
インターネットで検索する方法は、日本体育協会のホームページに検索ボックスがあるので、利用するといいでしょう。
また、日本整形外科学会では、認定スポーツ医を検索できるようになっています。
スポーツによる内科疾患や、女子選手の無月経などについての婦人科系疾患は、地域の体育協会のスポーツ医科学委員会に問い合わせると紹介してくれます。
おすすめの本
「子どものスポーツ障害 こう防ぐ、こう治す 親子で読むスポーツ医学書」
(柏口新二著 主婦と生活社 2008年)
ジュニアスポーツ選手の保護者必携の本だと思います。サッカーには限定されていませんので、兄弟で違うスポーツをしていても対応できます。
「基礎から学ぶ!スポーツ障害」
(鳥居俊著 ベースボールマガジン社 2008年)
少し対象年齢が上のため、子どものスポーツ障害としてはオスグッド病しか載っていません。が、長く使えるという意味では便利な本です。
辞書のようになっていますが、図もたくさん載っていて、一番いいのは、それぞれのスポーツ障害に対しての予防法が詳しく書いてあることです。
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最後に
「どこかにぶつけた?誰かと当たった?…ちがう?じゃあ、成長痛かもね」と、何回「成長痛」で片づけてしまったことか。知り合いには、膝の痛みを「成長痛」で様子を見ていたら、膝蓋骨損傷だったという人もいます。
たかが痛み、されど痛み。目に見えやすい分、ケガのほうが対処は早いのですが、ケガは治している間が問題です。十分休養を取らせましょう。
プレーを離れ、チームを離れていると、お子さんによっては大変焦りが出てくるときもあります。復帰した時、よりよい選手になっているために、さまざまなリハビリを調べてみましょう。
ケガなく、故障なくこの先もずっとサッカーを楽しんでもらいたいものです。ケガ、故障は、適切に治すのが最短距離。焦る気持ちを抑えて、まずは療養に努めましょう。
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