運動能力に「ゴールデンエイジ」、黄金期があるのはご存知の通りです。誰にでも平等に訪れ、爆発的な成長が見込める時期のことです。「育成のスイートスポット」とも呼ばれていますね。
運動能力のゴールデンエイジは、10歳から12歳までの期間のことです。プレゴールデンエイジとは8歳から10歳くらいまでの期間のこと。あらゆるサッカーの技術のおおもとが吸収・獲得できる期間です。
ところが、ゴールデンエイジが存在するのは運動能力だけではありません。目にもゴールデンエイジは存在します。
目のゴールデンエイジをご紹介する前に、「なぜサッカーのプレーは視力で変わるのか」について解説します。
「目がいい」だけでは意味がない!
私たちがイメージする視力は、学校等で新学期に行われる身体計測の一環として行われる視力計測です。その結果によって「目がいい」「目が悪い」といわれますよね。ところが、これは視力のほんの一部でしかありません。
視力とは、8つの「見る力」のことです。
1.静止視力
これは、止まっているものを見る力です。学校で行われる視力計測は、静止しているものを見て何が書いてあるか判断する(読める)力を計るものです。
学校は、基本的に黒板の板書など、「止まっているものを見る」が目の働きのメインとなりますので、静止視力さえ計れればよいのです。このため、現在に至るまで学校では静止視力しか求めません。
ちなみに、野球で有名なイチロー選手が視力0.4しかないのは有名な話です。が、イチロー選手は0.4の視力でも「飛んでくるボールの縫い目が見える」ようです。それは、以下に述べるような視力が優れているからなのです。
2.KVA動体視力
向うからこちらへ近づいてくるものを見る視力です。野球のバッティング、こちらへ向かってくるサッカーのパスなどを見て正確にピントを合わせることができる視力です。
キーパーのロングキックが大きく弧を描いて飛んでくるとき、ヘディングやトラップ、キックが合う子と合わない子がいますよね。
それは、KVA動体視力の差かもしれないのです。空振りの多い子も同様です。近づいてくるものと自分との距離をはっきり測ることができないので、体のタイミングも合うはずがありません。
3.DVA動体視力
KVAは向こうからこちらへ来るものにピントを合わせる視力でした。DVAは、横へ移動するものにピントを合わせる視力です。
縦横無尽にボールが飛び交うテニスには絶対に必要な能力です。もちろん、サッカーにも。DVA動体視力の優れている人には、「ボールが止まって見える」「飛んでくるサッカーボールの空気穴が見える」という現象は当たり前に起こります。
4.コントラスト感度
白い壁の前で白い卓球のボールを投げて受け止める…これは、たいへん受け止めるのが難しいシチュエーションです。背景と目標物が似たような色の中でそれらを見分けられる視力がコントラスト感度です。
白いユニフォームに白いボールなどの見づらい状況でも正確にボールの位置を把握することのできる視力です。
5.眼球運動
眼は眼球を動かす速度によっても得られる情報量が違います。これは、視力というより眼筋(眼球を動かす筋肉)によってコントロールされるものです。
アメリカンフットボールのクォーターバック、サッカーのミッドフィルダーなど、チームの司令塔には幅広い視野が見えていないといけません。広く素早くフィールド全体を見渡して把握するにはこの視力が不可欠です。
6.深視力
たくさん目の前にあるものが、どれがどのくらい遠く、どれがどのくらい近いという位置関係を瞬時に把握することのできる能力です。
サッカーでは、この視力は敵味方の微妙な距離関係を瞬時に判断し、スペースを瞬時に見つけることができる能力となります。
大型二輪の免許、二種免許の試験で行われる「三棹(さんかん)試験は、深視力を計るためのものです。
7.瞬間視力
目の前の情報を、一瞬でできるだけ多く正確に判断する視力のことです。「写真記憶」とも言われています。写真を撮ったかのように一瞬で細部まで正確に覚えることのできる視力です。
サッカーは、一瞬一瞬で敵味方の位置が入れ替わります。が、それをずっと眺めて状況判断していたのでは、ボールを見失います。
瞬間視力を鍛えれば、ちらっと見た一瞬を記憶し、判断することができます。バスケットボールやサッカーなど、敵味方が入り乱れて戦うスポーツには欠かせない視力です。
8.協応動作
眼と手が連動する視力のことです。目で見て、すぐに手や体の動きと協応できる能力ともいえます。
サッカーでは、ゴールキーパーに欠かせない視力と言えます。協応動作は手と目だけでなく、もちろん足や体をも使います。
身近な例だと、「もぐらたたき」などがこれに当たります。
※参考文献は末尾に明示します。
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