(この記事は再掲です)
「将来サッカーのコーチになりたい。海外の指導法を学んだ方が後々有利になることはありますか?」
「海外の指導法を学んでみたいけど、どの国に行くべきですか?」
海外のサッカー指導法を学ぶことやコーチライセンス取得に興味を持たれている方から、よく聞かれる質問です。
私が指導者として更なる成長を目指して海外に出ることを決めたのが2008年でした。
あれから15年。
当時と比べると、海外でサッカーの指導法を学ぶことが、とても身近になってきたことを感じます。
しかし、海外指導者留学の経験者に直接話を聞ける機会はまだまだ少なく、興味はあっても一歩を踏み出せないという方が多いのが現状です。
スペイン指導者留学の魅力は世界最高峰レベルの指導法を学べることにあります。
興味はあっても…という方々のために、私自身がスペインのサッカー指導者学校で育成法を学び、現地サッカーチームでアシスタントコーチ、第二監督を務めた中で感じたことを、サッカーの指導者海外留学全般の魅力と併せてお伝えします。
サッカーの指導者海外留学の魅力とは?
スペイン留学についてお話する前に、まずは海外留学の魅力について簡単に説明します。
私が実感した海外留学の魅力は次の4つです。
- スペイン語や英語など語学をマスターすることができる。
- 習得した語学力で海外の情報へ直接アクセスすることができる。
- 異文化を知ることができる。
- 海外で仕事に就くことが可能。
1.語学をマスターすることで世界が広がる
現地でサッカーの指導法を学ぶためには、まずスペイン語を習得する必要がありました。
留学先でスペイン語を習得したことで、私の人脈は一気に広がったように思います。
スペイン人の友達はもちろんのこと、留学中に語学学校で知り合った友達が今では世界の国々で活躍しています。
スペイン語は中南米で話されていますし、アメリカでも多くの人が使用する言語です。
少し古いデータになりますが、2005年の文部科学省の調査によると、スペイン語は「世界の言語別使用人口」の第4位にランクインしていて、約4億2千5百万人もの人が使用しているのだそうです。
(ちなみに1位は中国語、2位は英語、3位がヒンディー語)
スペイン語が使えるようになると、人脈を広げたり、海外での活動範囲を広げやすくなることが容易に想像がつくのではないでしょうか。
2.習得した語学力で海外の情報へ直接アクセスできる。
語学を習得すると、海外の情報へ直接自分でアクセスすることができるようになります。
サッカーの最新戦術をはじめ、優れた情報の多くは海外から発信されています。
例えばスペインでは書籍や動画などを通して最先端の情報が入手できますので、スペイン語ができれば、これらにダイレクトにアクセスすることが可能です。
日本に届かない情報もありますし、届いた情報の中にも、日本語に翻訳がされる際に大事な意図が消えてしまっているものが多々あります。
自分で直接情報を得られれば、そのようなことは少なくなります。
留学が終わったあとも、日本にいながらインターネットで最先端の情報をリアルタイムで取得していけることは大きなメリットといえます。
3.異文化を知ることができる。
留学中は否応なしに現地で異文化に触れることになります。
私も生活習慣が異なるスペインでは、最初は戸惑うこともありました。
しかし、あとで振り返ってみると、自分の価値観を広げてくれる経験になったと感じています。
「日本の常識は海外の非常識、海外の常識は日本の非常識」なんてことは日常茶飯事で面白い発見はたくさんありますよ。
それを実感することで、今まで当たり前だと思っていたことに疑問を抱くようになり、世界の見え方は大きく変わります。
4.海外で仕事に就くことが可能。
日本でも、外国語を使えることで仕事のチャンスが増えることは、多くの方が感じておられるのではないでしょうか?
サッカーの世界でも同様で、自分のやりたいことを仕事にする可能性が広がります。
スペイン語を使う仕事としては通訳、代理人、外国人選手を扱う指導者などがあります。
語学力を活かして海外でバリバリ働く!ということも、もちろん可能です。
(語学力と留学経験を活かしバルセロナで仕事をすることも可能。カンプノウでの記者席にて)
指導者スペイン留学の魅力は世界最高峰の指導法に触れられること!
サッカーコーチの海外留学と一口にいっても、スペイン、イングランド、フランス、ブラジル、アルゼンチンなど選択肢はたくさんあります。
今回はその中でも、私自身が指導法を学んだ「スペイン留学」についてお話したいと思います。
スペイン留学の最大の魅力は「世界最高峰レベルに高度な戦術の指導理論を学べる」ということです。
皆さんご存じのとおり、近年のスペインサッカーはワールドカップ優勝、ヨーロッパ選手権を連覇するなど世界の注目を浴びる成果を残しました。
同時にFCバルセロナが世界のサッカーのトレンドを変え、一時代を築きました。
その背景には、長年のブラッシュアップによって構築された「高度な戦術」を選手に浸透させる「指導理論」があります。
スペインサッカーの戦術レベルは世界最高峰にあると言われています。
ヨーロッパの他国リーグで結果を出して移籍してきた選手ですら、スペインサッカーの戦術を理解しなくては、監督からの要求に応えてパフォーマンスを発揮するのが難しいほどです。
スペインではトップリーグのコーチだけでなく、育成年代を担当するコーチたちもサッカー指導者学校で指導理論を学んで、子ども達を教えています。
スペインにサッカーコーチ留学をするということは、世界最高レベルの戦術を学び、指導理論に触れることができるのです。
スペインで学べるサッカー指導理論の内容
スペインのサッカー指導者学校で実際に行われている科目をご紹介しましょう。
- 戦術
- チームプレー
- テクニック
- チームマネジメント
- サッカーに関わる法律
- スポーツ医学
- トレーニングメソッド理論
- GK
座学と実践を行い、全ての科目のテストに合格することでライセンスを発行してもらいます。
サッカー指導者学校では現地クラブでのインターンシップも義務付けられており、チームに帯同することになります。
スペインのクラブチームに帯同し、トレーニングを間近で見て、ベンチに入ったりミーティングの進め方を近くで体験できるのは貴重な経験です。
理論と実践をバランスよく積み重ねていくことが指導者としては重要ですが、スペインの指導者学校のカリキュラムには、その両方を得られる環境が整っています。
指導者留学をサポートする動きも!
このように、たくさんのメリットがあるスペインでの指導者留学ですが、「本当に言葉を身に付けられるだろうか?」「授業内容を正しく理解できるだろうか?」という不安を抱える方が多いと思います。
私自身も、留学当初にはずいぶん苦労しました。
その経験をもとに、現在ではスペイン・バルセロナで留学生をサポートするスクールの運営にも携わっています。
例えば、「スペインサッカー理論」の授業では日本人の講師の元、日本語で事前に指導者学校の主要な科目の内容を予習できたり、スペイン人講師によるサッカーの特別用語や表現を勉強し、トレーニング説明の仕方やミーティングの話し方などを学ぶこともできます。
日本人講師の元で事前に予習してから、指導者学校に通うことで、より学びが深まるメリットがありますね。
また、知識を得るだけにとどまらず、スクールでの授業はプレゼンテーションや意見を述べるディスカッション形式で進み、日本の学習スタイルとは異なるスペインの授業の進め方に順応できるようにしています。
スペインでライセンスを取得した先輩がスクールでの講師を務めますので、「指導者学校についての相談にも応じてもらえるのが心強い」と言ってくださる方もいらっしゃいます。
現在では、このように現地でサポートを受けられるサービスも増えていますから、場合によっては上手に活用して、無理や無駄のない指導者留学を目指してもらうと良いのではないでしょうか。
最後に
JFAの発表している「指導者登録数」によると、S級からD級までの指導者登録者数は2012年に7万人を突破。
以降、毎年増加しており、2021年度には8万4千人に達しています。
毎年増えていく指導者の中で、何か自分の特色を打ち出すことも、指導者を仕事としていくには必要になってくるかもしれません。
そうした時に、スペインでの指導者留学の経験が、一つの支えになることを願っています。
<参考文献>
文部科学省「世界の言語別使用人口」(PDF資料)
http://www.mext.go.jp/
JFA 「サッカー指導者登録数」
http://www.jfa.jp/about_jfa/organization/databox/coach.html
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