(この記事は再掲です)
「サッカー留学」と言えば、ほとんどの人が選手、プレーヤーとしてのそれを思い浮かべるのではないでしょうか。小学生、中学生のサッカー留学であればおのずとその選択肢になるでしょうが、高校生となると進路の選択肢がそれまでと比べて格段に増えます。ここでは「高校生のサッカー進路」としての「指導者留学」について考えます。
期間・費用について
選手として国内・海外でプレーする道があるように、指導者としても国内だけでなく海外で勉強・活躍する選択肢があります。
一言で「指導者留学」と言っても、高校生の長期休みに行けるような一か月未満のものから、卒業してから本格的に学びに行く一年以上のものまで色々あります。
短期のものは金額も20万から40万、1年以上に渡るものは200万から300万あたりが相場のようです。
語学について
海外に留学するに当たり最も心配なのが語学についてだと思われます。一般的にはコーチングのトレーニングの無い午前中に語学学校に通うという形が多いようですが、留学斡旋先によっては実際にコーチングの勉強をする前に、一般的な語学はもちろんのこと、サッカーの専門用語や基礎知識をその国の言葉で学んだ後にコーチングスクールに通うといった、前準備を入念に行うところもあります。
その前準備はコーチング内容に特化された語学研修である場合が多いようです。ただし別に費用が掛かる場合もあります。
普通の語学学校では教わることの出来ないサッカーの独特な用語や言い回しなどを学べる事は、その後の指導者としての勉強をする上で本人にとっては大きなアドバンテージになります。親御様にも大きな安心となるのではないでしょうか。
内容について
実際に勉強する内容としては、サッカーライセンスを取得するに当たって必要なコーチングや応急手当等、実際に選手を指導する際に必要な事柄が主ですが、それだけではなく、育成について、チーム管理、プレゼンテーションの仕方など、クラブ経営に関わることまで多岐に渡ります。海外ではいかに自分の考えを相手に伝えるか、プレゼン能力も大いに問われます。
その国のトップリーグの試合を観戦することも多くの留学先の勉強の一つとなっています。
それまでテレビでしか見られなかった海外の試合を肌で感じられる事は、その後の留学生活に大きな影響を与える事でしょう。
生活について
勉強以外の普段の生活は、シェアハウスや寮など、費用的には抑えた暮らしをする場合が多いようです。団体で生活するシェアハウスや寮であればいろいろな国の若者と互いに協力しながら生活します。また、留学斡旋先によってはアパートで独り暮らしをする事もあります。そうなると当然自活する必要に迫られます。自分で街に出て買い物をして自炊をする。治安が悪く日常的にスリなどの危険性がある国や地域もあります。自分の身は自分自身で守る事を学ぶ事でしょう。日本と風習の違う国で暮らすことはサッカー指導者としてだけではなく、一人の人間・社会人としても得難い体験が出来るはずです。
ひとつ気を付けたいのは、留学斡旋業者が提示している留学費用には勉強に関わる費用以外の生活費等は含まれていない場合がほとんどです。ここは注意が必要です。
留学後について
留学後に気になるのはその後の就職等の進路ですが、留学の目的であったサッカーの指導者になる事が多いようです。日本に帰って国内の普通の指導者・コーチとしてだけではなく、海外で学んだ最新の指導法や理論、そして語学を活かして活躍出来る場が多いプロのクラブチームに就職出来るチャンスもあります。前にも述べたように、サッカーの独特な用語や言い回しなど国内はもとより、普通の海外語学留学では教わることは出来ません。
外国籍選手の多いプロクラブなどで需要の多いコーチ兼通訳等は、日本人監督・選手と外国人選手の意思の疎通を専門的な言い回し等をその語学能力で伝えられる能力が最大限に活かされる職業です。
また、近年では日本だけではなく韓国、更に潤沢な資金でクラブチームを思いのままに強化している中国など、サッカーのマーケットとしても注目されているアジア諸国に、主に欧州のビッグクラブがこぞってアジアツアーをおこなったり、サッカースクールを開設しています。そういうところでも留学経験と語学能力のある人材は重宝されています。
もちろん、日本に帰らずに現地で指導者・コーチになる道もあります。その国の外国人である日本人が指導者になるのは容易ではありませんが、留学先のサッカーに魅せられ、そのまま現地にというケースも少なくありません。海外での人脈が広がるのも大きなメリットと言えるでしょう。それを活かし、現地のコーディネーター、ジャーナリスト、記者等に活躍の場を見出す場合もあります。
指導者留学を経験した著名人
高校を卒業してすぐに海外に留学なんて・・・プロを経験しないで指導者なんてなれるのか、と思われる方もいるでしょうが、日本の著名な指導者の中には、プロ選手としての経験がない方もいます。サッカーの指導者になる前、指導者になった直後、あるいは大学生の時に思い切って海外に飛び出した例もあります。
三浦 俊也氏
プロ経験は無く選手時代は無名。大学でも控え選手。大学卒業後、養護学校の先生をしながらサッカーを続けるが、指導者になる夢を持ちドイツに留学。ドイツA級ライセンスを取得し帰国、国内でS級ライセンスを取得。Jリーグで大宮、神戸等の監督を務める。
山本 佳司氏
滋賀県立野洲高校サッカー部監督。大学時代はレスリングの選手。大学の交換留学でドイツへ渡り、サッカーにのめり込み指導者の道へ。教員として赴任した野洲高校でセクシーフットボールと呼ばれたサッカーで、無名の公立高校を日本一に導く。
岡田 武氏
現役時代晩年に対戦した海外チームに刺激を受け、自分が海外の選手たちに追い付くのではなく、どう指導すれば彼らに勝てるような選手を育てられるかに関心を持ち、引退後、企業チームのコーチに就任。その後ドイツに留学し帰国後経験を積み、日本代表のコーチを務め、後に日本代表監督に。
『指導者留学』という言葉だけ見ると、高校卒業したばかりの少年には難しく感じるかもしれませんが、色々な事を真っ白な感性とスピードで吸収出来るこの時期こそ、自身の可能性を無限に広げるチャンスかもしれません。
最後に
プロにならずとも指導者にはなれます。上にあげた方々とは別にもプロの選手を経験して指導者になった人たちのほとんどが海外に勉強に行っています。Jリーグのトップチームや日本代表監督になるのに必要な、公認S級ライセンスを取得するのに海外でのインターンシップが必須となっている為もありますが、それだけ指導者になるのに有益だという事でもあります。
高校を卒業したばかりの、まだまだ子供のわが子をいきなり海外に出す事には不安もあるでしょう。しかしサッカーというグローバルな競技に関わっていくに当たり、指導者留学という選択肢は今後より一層注目されていくのではないでしょうか。
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