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サッカーを楽しむ力を育てる「自ら考え、行動できる人に」おおぞらサッカークラブU-15 小林 一幸監督インタビュー

おおぞらサッカークラブU-15は、サッカーを「楽しむこと」を最も大切にするチーム。
勝利だけでなく、選手一人ひとりの成長や自主性を尊重し、長く続けられる環境作りを目指しています。
そのためには、どんなことが行われているのでしょうか?
チームを率いる小林 一幸監督に、お話を伺いました。

お話を聞いた人

おおぞらサッカークラブ U-15 小林 一幸監督
A級ジェネラルライセンス

サッカーを楽しむ力を育てる

ーーーおおぞらサッカークラブ U-15は、どんなクラブですか?

おおぞらサッカークラブ U-15 小林 一幸監督(以下、小林)
「サッカー=生涯スポーツ」という考え方を大事に指導しています。

サッカーをもっともっと好きになってもらいたい、とことん楽しんで欲しいという思いから、セレクションは行っていません。
多様性を尊重し、スポーツが苦手な子や異なる体格の子とも一緒にプレーします。
試合の勝ち数は少ないかもしれませんが、全員が参加することを目指し、チームとして成長していくことが重要だと考えています。

私自身、小学校4年生から社会人までサッカーを続けました。
指導者の道に入り、ナショナルトレセンにも関わってきましたが、そこに入れる選手はごく一部です。
プロを目指す選手も限られています。
ですが、その中に入っていけない選手の方が実際にはたくさんいて、そういう子どもたちこそが日本のサッカーを支えていると思うのです。

サッカーを楽しみ、長く関わってほしい。
サッカーをプレーするだけでなく、大人になってもサッカーファミリーとしてつながりを持ってほしい。

途中で燃え尽きたり、嫌いになったりせず、ゆっくり長く続けて欲しいという思いを持って選手たちに関わっています。

「自ら考え、行動できる人に」
動画分析やグループワークの取り組み

ーーー多様性を尊重するとおっしゃっていましたが、具体的にはどんな活動をされていますか?

小林
子どもたちだけで考えさせることを意識した様々な活動をしています。

試合の動画を分析する取り組みも行っています。
先日、雨の中での高円宮杯で大敗を経験しましたが、その試合を自分たちで編集した動画を使って振り返るグループワークを行いました。

この取り組みを始めた当初は単に『ここがダメだった』『ここが良かった』というざっくりした分析から始まりましたが、回を重ねるごとに、どういう点が良くなかったのか、逆にどういうプレーが成功したのかを具体的に理解できるようになってきました。
選手同士のコミュニケーションも活発になり、トレーニングや試合中の会話を拾い上げながら、戦術理解が深まっています。

動画分析やグループワークは選手たちのサッカー脳を育てる工夫の一環としても行っていますが、多様な意見を互いに認めるということも目標に置いているんです。
こうした取り組みを通じて、将来はアナリストを目指す子も出てくるかもしれませんね。サッカーだけでなく、他のスポーツや分野にも応用できる力を育んでほしいという願いも込めています。
客観的に物事を考える目が養われることで、選手たちが将来、様々な場面で役立てられるようにしてもらえたらと思っています。

ーーー子供たちが自分たちで考えられるよう、どんな工夫をしていますか?

小林

今は、ミーティングや合宿の際に選手たちにアンケートを取り、食事について意見を聞くようにしています。例えば、試合中の弁当について話し合い、選手自身が自分に必要な栄養を考える手助けをしています。

最近、ジュニアユースの選手がクーラーボックスにフライドチキンを入れてきたことがありました。

保護者の方が入れてくれたものだと思うのですが、試合の前日や当日は揚げ物は避けた方が良いという意識が選手の中にあったのでしょう。「試合後に食べます」と自ら言いに来たんです。
選手自身が今は揚げ物を食べないという選択をしたことに関心しました。

――合宿の際の選手たちの顔が最高ですが、こうした生き生きとした合宿はどうやって生まれますか?

小林
合宿の時も、起きる時間、散歩する時間、寝る時間など、タイムスケジュールは選手たちに話し合って決めてもらっています。合宿時は試合でも、選手たちにある程度の時間配分を自分たちで考えてもらっています。
例えば、「宿舎から会場までは何分くらいかかる」という基本的な情報は伝えますが、その後は、選手たち自身が「何時に食事を始めて、何分で食べ終わるから、何時に起きればいいか」といった逆算を行います。

「もう少し遅く起きてもいいんじゃないか」とか、「もっと早く準備すべきだ」といった議論も起こりますが、そうした経験を通じて学んでいくのです。
私は見守りながら、内心では「間に合わないかもしれないな」と思うこともありますが、選手たちの自主性を尊重して、あえて口を出さないようにしています。

もちろん、対戦チームには事前に「ギリギリになるかもしれません」と伝えるなど、相手に迷惑をかけてしまいそうなことはこっそりとフォローはしていますが、こうした経験が選手たちの成長に繋がると信じています。

ーーー活動を通して、選手たちの自主性が育っているなと感じることはありますか?

小林
様々な場面で選手たちの成長が見られます。
最近、6年生の男子と女子の選手が体験練習に参加してくれたのですが、男子選手も女子選手も良いプレーをした時に、ジュニアユースの選手たちが拍手して褒め合う姿が見られました。
思春期の子どもたちがそうした行動を取るのは難しいと思っていましたが、できるようになっています。

大人になったら、様々な人と協力しなければなりません。
そのために、考え方の多様性を認め合うことが大切です。互いに理解し合うことでプレーの特徴を活かせるようになります。
これにより、高校に進んでもどんなチームでも適応できる力が育まれると考えています。

指導者も共に学び、共に楽しむ

▲写真はスタッフミーティングの様子

ーーースタッフはどのように選手をサポートしていますか?

小林
スタッフにはそれぞれ担当がありますが、どのコーチも選手たちのことを一通り把握しています。
異なる視点から選手を見ることで、より良い指導ができると思うので、指導体制はなるべく固定しないようにしています。

うちはジュニアからチームがあるクラブなのですが、ジュニアユースチームはジュニアから上がってくる選手だけでなく、違うチームからくる選手もいます。
他チームから来た選手がうちの練習を通して、新しいことをスポンジのように吸収して変化していくのを見ると、興味深くもあり嬉しくもありますね。

地域とのつながりも大切にしていて、町の行事に参加することも多いです。
今年度はマラソン大会にも参加しましたし、中学生は益子で開催される駅伝大会に挑戦する予定です。
選手同士の絆を深めるために、全員で参加しようと思っています。
足りないところは、私自身が走ることもありますよ(笑)。距離は2、3キロほどですから、無理なく参加できます。

以前も練習試合に一緒に出たのですが、大人が頑張ることで、子供たちも一層盛り上がるんですよ。
選手と一緒に体を動かすことで、大人も子どもも垣根なく一体感を感じられるようなチーム作りを目指しています。

ゴールは社会
社会で活躍できる選手を育てたい

ーーー指導者として、子供に関わるとき、どんなことを大切にされていますか?

小林
押し付けるような指導は好ましくないと思っていますので、何事も無理にさせるのではなく、自発的にできるようになるよう心がけています。
最終的には社会に出ることを意識した教育が大切です。

サッカーを通じて子どもたちが嫌な気持ちにならないよう、例えば試合での大敗からサッカーを嫌いにならないようにとか、サッカーが好きだという気持ちを育んでいくことも重要だと思っています。

そのためには、まずは大人が意識を変えていくことが大事だと考えます。
私自身も指導者としての能力を向上させて、変えていきたいと思っています。

サッカーの裾野を広げていきたいという思いがあり、将来的には選手たち自身がその広がりを支えてくれるといいなと思っているのです。
指導者の接し方や声掛けなども、そこに繋がっていけるように意識しています。

ーーーチームが選手たちに一番伝えたいことはなんでしょうか?

小林
まずはサッカーを楽しんでもらいたいということです。
私は子どもたちはもちろん、保護者の方々にもまずはサッカーを楽しんでもらいたいと思っているのです。

強いチームが良い、勝利し続けるチームが良いという意見もあるとは思います。ですが、それだけが全てではないと考えています。

サッカーを長く続けて、好きでい続けて、仲間を大切にできる子になってほしいと思っています。
サッカーを通じて、人生における大事なことに気づいてほしいと思っています。

最後に

小林監督とのインタビューを通じて感じたのは、「楽しむこと」の大切さです。
サッカーが上手いかどうかではなく、長く続けること、その過程で得られる喜びや仲間との絆を重視している姿勢が印象的でした。
試合に勝つことだけでなく、選手たちの成長や自主性を育むことに重きを置き、指導者自身も学び続ける。
その姿勢が、クラブ全体に温かくポジティブな影響を与えていると感じました。
サッカーを通じて、人生の大切なことを学べる場所。
クラブのますますのご活躍をお祈りしています。

寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWSテクニカルマイスターWriterCrane
滋賀県在住ライターのCraneと申します。
2022年8月にライター歴5年目に突入、サッカー娘の母歴は丸12年になりました。

どんな試合でも、その一戦を迎えるまでにどれほどの努力があったのか。そしてそこに、どれほどの方の支えがあったのか。

頑張っている選手達、それを支える保護者、指導者の皆様が持つ数多のドラマに想像を張り巡らせてはリスペクトが泉のように湧き上がる日々。
涙腺も年々緩くなり、留まることを知りません。

8チームから12チームくらいの規模の大会、16チーム以上の大きな大会ともに情報は常に募集しています。
大会結果画像、弾けるような笑顔のお写真、選手達のご活躍の様子をぜひお寄せ下さい。いつでもお待ちしています!

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