2019年7月は梅雨の影響で、記録的な日照不足。
東京都心では日照時間が3時間未満の日が20日間連続(統計開始以来最長)で続くという、異常気象に見舞われました。
しかし、梅雨明けと共に8月は平年並みの暑さになると気象庁は予想を発表していることから、7月最終週から8月は一転して熱中症への備えが必要になってきます。
ジュニアサッカーNEWSをご覧いただいている保護者、関係者の皆様はお子様はもちろんご自身の体調管理にも気を付けてお過ごしください。
熱中症の症状と対処法をご紹介します。対処法をしっかり覚えていざという時に備えておきましょう。
JFAも推奨 練習・試合前の水分補給の仕方
2019年7月4日にJFAは公式HPで『日本代表フィジカルコーチが語る、代表チームの暑熱対策「対策は、練習が始まる前からできる」』という記事を掲載しました。
ここでは、練習や試合前の水分補給の重要性が強調されていますので、ご紹介します。
強調したいのは、練習前に水分を取ることの重要性です。練習前に脱水していないことが大前提なので、これは「超」がつくほど重要です。最初の運動で一気に汗をかいたとして、そのときに喉が乾くようでしたらもう手遅れです。一定のパフォーマンスを発揮するためには体が脱水状態にならないことが必須で、そのためには練習前からきちんと水分を補給することです。(中略)
250~500㎖でペットボトル約1本分、またはアイススラリー(※)1パックを飲んでもらうことが理想です。それくらいの量ならば誰でも飲めると思います。グラスルーツでも、練習前には水分補給する習慣を少しでもつけてほしいですね。子どもの場合はペットボトル半分でもいいので、飲んでほしいです。
※液体を製氷し、微細に砕いてシャーベットと液体分が混ざり合うようにした飲料のこと。流動性のある氷の粒子を飲むことで体内から効果的に冷やし、同時に水分補給もできる。
(引用元:JFA公式サイト)
上記は日本代表チームの松本良一フィジカルコーチのお話ですが、それ以外にも効果的な身体の冷やし方や、夏場の体調管理の仕方について、有益なお話がたくさん載っているので、ぜひご一読いただいて家庭でも実践していきたいところです。
熱中症 重症度別の対処法
重症度Ⅰ度 めまい・立ちくらみ・こむら返り・大量の汗
<対処法>
涼しい場所へ移動・安静・水分補給
重症度Ⅱ度 頭痛・吐き気・体がだるい・体に力が入らない・集中力や判断力の低下
<対処法>
涼しい場所へ移動・体を冷やす・安静・十分な水分と塩分を補給。症状が改善されれば受診の必要なし。水分を自力で摂取できない場合や症状に改善が見られない場合は受診が必要。
重症度Ⅲ度 意識障害・けいれん・運動障害
<対処法>
涼しい場所へ移動・安静・体が熱ければ氷水などで急速に冷やす。ためらうことなく救急車を要請。集中治療室で治療を受ける必要がある症状です。
重症度Ⅲは、熱射病と呼ばれる症状になります。体温は40℃を超え、中枢神経に異常をきたしている状態です。呼びかけへの反応が鈍かったり、痛みに対して鈍感になる。言動が不自然になり、ふらつきが出ます。
とにかく急速に体温を下げることを心がけることが必要です。学校のグラウンドで練習を行っている場合にはプールを拝借しましょう。全身濡らしたうえで扇風機の風に当てるのも有効です。
ちなみに…
Q,体のどこを冷やせばいい?
A,頸部(首の部分)・脇下・鼠径部(太ももの付け根)など、大きな血管がある辺りを冷やすのが効果的です。
Q,冷却するための器具は何が良い?
A,氷をビニール袋等に入れて作ったアイシングバックや、冷水を浸したスポンジなどが良いとされています。
Q,意識障害・運動障害とは?
A,意識障害とは、外界からの刺激に反応がなかったり、周囲の状況を正しく理解できない状態のことです。運動障害とは、自分の意思で筋肉を動かせなくなった状態や、運動に関わる筋肉の動きを調整する機能が失われ、スムーズな運動が障害された状態を指します。
熱中症、すばやい対処が必要なのはなぜ?
熱中症とは気温の高い環境で生じる健康障害の総称です。体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなり、体温上昇、めまい、倦怠感、けいれんや意識障害などの症状が起こります。
熱中症はスポーツ障害のなかでは最も重症度が高く、致死率も高い障害です。症状は段階的に進んでいくため、早い段階で子どもが、「なんとなくおかしい…」と思ったら、すぐさま重症化させないための対処をしなければなりません。しかし、いざ熱中症・熱射病の症状が出た際に、応急処置ができますか?なんとなくならわかるけど…その対応で命取りになる可能性もあります。
夏のサッカー少年の大敵、熱中症。予防方法は熟知し気を付けていても、その日の体調、環境などで防げないこともあります。また、子どもは自分の体調を把握する能力が十分に育っていないため、決定的に違和感があらわれるまで熱中症の症状に気が付かないこともあります。保護者、指導者の目配りが必要です。
運動中はどんな飲み物を飲めばいいの?
熱中症はたくさんの汗をかくことで水分と塩分が失われる脱水症によって引き起こされます。熱中症か?と思ったら、「冷やす」+「水分」+「塩分」が基本です。運動中に大量の真水を飲むと、血液中のナトリウム濃度が一気に下がり、危険な状態になることがあります。
運動中の水分補給は、糖分と塩分が含まれているスポーツドリンクや経口補水液、ミネラルウォーターや麦茶には、一緒に塩や梅干しなどをなめて塩分も補給しましょう。
熱中症の細かい症状や対処法、補給するドリンクについて、さらに詳しく説明しています!
→もしかして熱中症?食中毒?サッカー少年の夏のトラブルを重症化させないための4つの対処
予防するにはどうしたらいい?
予防するために、8つの対策法を紹介しています。
- 体温を上げないために気化熱を利用する「水かけ」
- 風を利用して首など体を冷やす
- 帽子等を利用して太陽光をシャットアウト
- 水分補給は鉄則
- 睡眠不足の解消に「早起き」を
- 塩分の摂取
- おかずをしっかり食べよう
- 子供に熱中症について知ってもらおう
詳しい説明はこちらの記事にあります!
熱中症で搬送者続出!?知らなかったじゃすまされない…本気で予防するならこれ【8つの対策法】
夏の体調管理
サッカー協会では熱中症対策として、プレー前の体調のチェックや、暑さに慣れるための暑熱馴化を推進しています。
体調管理のガイドライン
暑さへの耐性は個人差があるので、個人の特性を把握した上で、プレー前の体調をしっかりチェックすることが必要とされています。風邪や下痢などの症状はないか?食事や睡眠は十分に取れているか?などがチェック項目に挙げられます。チェックリストは日本体育協会『熱中症予防ガイドブック(P49)』に掲載されています。
トレーニング前の体調チェック項目
□ 睡眠が不足している(よく眠れなかった) □ 熱がある、熱っぽい
□ 喉が痛い □ 風邪を引いている □ 下痢をしている □ 朝食を抜いた
選手の特性チェック
□ 経験年数が少ない □ 過去に熱中症を経験したことがある
□ 肥満気味である □ 体力が低い
参照サイト:熱中症予防ガイドブック 日本体育協会
暑熱馴化とは?
暑さに体を馴れさせるために行うものです。暑くなり始めた時期に、暑さに馴れるまで1~2週間を馴化期間に設定し、徐々に負荷を高めていくなどの方法をとります。詳しくは日本体育協会『熱中症予防ガイドブック(P39)』に掲載されています。
①暑くなり始めたら、馴化期間を設ける(運動強度、時間、服装などの調整)
②馴化期間の初めの2~3日は、徐々に負荷を上げるようにする
③汗で失った分の水分と塩分を補給する
体が暑さになれてくると発汗量も増えるため、水分・塩分(スポーツドリンク)の準備も忘れずに
④連日高温が続くことによる、疲労の累積効果にも気をつける
参照サイト:熱中症予防ガイドブック 日本体育協会
梅雨が明けるとすぐに猛暑となり、体調管理が難しくなります。その日の体調を気にかけながら、徐々に体を暑さに馴れさせていくことが大切になります!
最後に
ご自身が知っている対処法はどうだったでしょうか?私自身、そもそも熱射病は文字通り、太陽に当たりすぎて引き起こされる症状かと思っていましたが、熱中症のさらに危険な状態だったとは知りませんでした。太陽に当たる、当たらないは関係ないのですね。熱中症が良くないこと、危ないことだとわかっていても、いざという時の対処法は分からなくなってしまいます。
症状別の対処法を少しでも覚えていたら、ためらいがちな救急車も迷わず呼ぶことができるのでないでしょうか。いざという時の対処法を覚えて、楽しい夏休みの思い出を作ってもらえたらと思います!
参照サイト:サワイ健康推進課
参照サイト:環境庁 熱中症予防情報サイト
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