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子ども達の笑顔のため、地理的デメリット解消にむけて FCヴォルティーダ 石子 善章コーチインタビュー

地理的デメリット。
大都市圏にお住まいの方は意識したことがないワードだと思います。
島で暮らすサッカー少年たちが直面する問題のひとつです。
その問題を解決する方法に真剣に取り組みつつ、チームの強さをめざましく向上させているチームがあります。
強さの秘密、子ども達の自己実現をかなえていく秘訣をうかがいました。

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▼本文は写真の下に続きます▼

お話を聞かせてくれた人

FC ヴォルティーダ ジュニア監督
石子 善章(いしこ よしあき)
愛知県名古屋市出身

2007年~2016年 沖縄県伊江島 伊江FC ジュニア
2017年~ 沖縄県名護市 FCヴォルティーダ沖縄ジュニア

ライセンス:JFAサッカー公認C級コーチ
公認GK-C級コーチ
フットサル公認C級コーチ
サッカー4級審判員
フットサル4級審判員

上位大会進出は子どもを大人にする

ーーーFC VOLTIDAは、ここ4,5年で非常に強くなってきたチームだという印象があります。これは一体何が起きているんですか?

石子
「何かを変えているわけじゃないんです。むしろ練習は何も変わっていないです。

4,5年前は確かに県大会にやっとの思いで出られたらラッキー、という感じでしたね。県大会にやっとのことで進出できるようになったら、県大会という舞台の中で子どもたちが「自分たちがしっかりしなきゃいけないな」と思い始めたみたいなんです。

そこから主体的に動ける子が増えてきました。去年やおととしの戦績から上位に行きたい、と。練習内容は変わっていないのに、態度が変わるとプレーが変わるんです。

県大会に出られるまで、当時は選手達も沖縄県の北部の中でしか試合をしていなかったです。

北部大会だけで戦っていたときには、夢は「北部大会」でした。それが県大会に出られるようになると、サッカー選手として目指すモノが変わってくる。
去年は初の九州大会にも出場しました。最初は負けます。ですが、出場できたことによって見える景色が変わってくる。当然、意識も変わってくる。県外の強豪チームと試合させていただいたことによって、子どもたちがどんどん主体的に動けるようになっていくんです。

だから、いろいろなところへ連れて行って、九州だけではなく東京でも大阪でも、本当は遠征をさせてやりたいんです。強いチームがいるところに出かけていって、その地の雰囲気を感じさせ、意識を成長させていって欲しい。今は全然遠征が出来ていませんが、強くそう思っています。」

コロナが奪った「資金問題解決」の方法

ーーー沖縄は募金文化があると聞いています。上位大会進出が決まると、子どもたちがまず募金箱を作るとか。

石子
「そうですね、募金箱をコンビニや商店におかせてもらう、ということはよくやります。沖縄以外の地域でもあるとは思うんですが、『資金造成』ってご存じですか?」

ーーーすみません、わかりません。資金造成とはなんですか?

石子
「九州大会、全国大会に行く、と決まった時点で、例えばインスタントラーメンに出場記念の写真を貼って、定価よりもちょっと高めに買ってもらうんです。差額を寄付という感じでいただくんですが、今のクラウドファンディングとリターン、という形にちょっと似てるでしょうか。どこのチームでもやっていて、お互い様みたいな感じで資金調達をするんです。

ここ2年はコロナのせいで資金造成も厳しいですね。
会場で寄付を募ったりもよく見かけた光景ですが、今は大会の滞在時間も短く、自分たちの試合が終わったら帰る、という感じになっているでしょう。そこで寄付は集められませんよね。

人との接触を避けなければいけないので、募金箱を持って回ることもできないし、大会自体もなくなってきているのでなかなか大変です。

ーーーコロナはこんなところにも影響があるのですね。

石子
「僕たちはそれでも子どもたちに外を見せる機会を奪いたくないんです。

上には上がいることを見せる機会は、きっと成長の機会になるからです。

例えば関東や関西の県だったら、隣県の強豪チームと試合をすることに飛行機代をかけなくてもよいでしょう。
沖縄だからそれができない、は沖縄の子どもたちのチャンスを奪ってしまうことになるかもしれない。

子どもたちは強いチームと対戦すればするほど、どんどん成長していくんです。
最初は県大会出場で子どもたちはとても喜んでいました。
でも、今はもう沖縄で優勝することが喜びです。
次は九州大会へ。その先には全国大会があるでしょう。子どもたちの世界はもっともっと広げてあげることができるんです。

そのためにできることがあるなら、僕はいろいろ試してみたいと思っています。」

「勝ったら笑顔じゃないですか」

ーーー遠征や九州大会、全国大会には確かに費用がかかりますよね。沖縄ということで、常に移動は飛行機、お金はかかる、という印象がありますが、この点もコロナで変わったということはあるのでしょうか?

石子
「県外へ出ようとすると移動は常に飛行機です。
例えば、ヴォルティーダは3月に九州大会に出場するんですが、できるだけご家庭の負担を減らしたいから早割などのチケットを予約します。

ただ、早割をはじめ、何かのお得な割引がある航空券はキャンセルができないんですよ…。
今、またコロナが感染拡大してきていますよね。
たとえば、沖縄県が他県への渡航を禁止したら、もちろん行けなくなってしまう。
行けても、感染拡大次第で、九州大会自体がなくなったりすることもあるかもしれません。

そんな状況もあり、「行けないけどお金だけかかった」という事態にならなくてすむように旅行会社とも交渉していますが、本当にコロナには困っています。」

ーーー九州大会に出場できたら、また子どもたちの意識が変わりそうですよね。

石子
「負けたい子っていないじゃないですか。
そして、勝ったら笑顔じゃないですか。

僕は、勝って笑う子たちが見たいんです。だから、勝たせたい。
頑張って頑張って、勝ったら嬉しいでしょう。
嬉しいことを体験させてあげたい。上に行けば行くほど、嬉しさも大きいはずです。

そして、もっと上に行きたいと子どもたちは勝手に思い始めるんです。
もっと上に行きたければ、主体的になります。

九州大会を、全国大会を経験させてあげられたら、その子のサッカー人生が変わるかもしれないじゃないですか。

沖縄の北部のサッカー世界しか知らなかった子たちが、県大会へ行ったら意識が変わって行動が変わり、サッカーの夢も変わるんです。
九州大会に行けたら、全国大会に行けたら、この子達の夢はどんどん育っていくでしょう。サッカー選手として目指すものも変わってくるでしょう。

でも何より、勝って喜ぶ子どもたちの姿。
僕はそれが見たいんです。」

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寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWS統括編集長/事業戦略部水下 真紀
Maki Mizushita
群馬県出身、東京都在住。フリーライターとして地方紙、店舗カタログ、webサイト作成、イベント取材などに携わる。2015年3月からジュニアサッカーNEWSライター、2017年4月から編集長、2019年4月から統括編集長/事業戦略部。2023年1月からメディア部門責任者。ジュニアサッカー応援歴17年。フロンターレサポ(2000年~)

元少年サッカー保護者、今は学生コーチの親となりました。
見守り、応援する立場からは卒業しましたが
今も元保護者たちの懇親会は非常に楽しいです。

お子さんのサッカーがもたらしてくれるたくさんの出会いと悲喜こもごもを
みなさんも楽しんでくださいますように。

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