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新人戦九州大会鮮烈デビュー!飯塚高校の躍進のヒミツとは?プロジェクトの全貌を中辻喜敬監督にインタビュー

2019年度高校サッカー新人戦福岡県大会では準優勝を果たし、筑豊のチームとしては約半世紀ぶりとなる九州高校サッカー新人大会に出場した飯塚高校サッカー部。グループリーグ予選では佐賀東に惜敗するも、創成館と引き分け、神村学園に快勝し見事予選を突破。決勝トーナメント1回戦では優勝候補の大津と接戦の末1-0で敗れましたが、九州の上位レベルのチームが相手でもしっかりと通用する力を見せつけました。飛躍を続ける飯塚高校サッカー部を率いる中辻監督が掲げるプロジェクトについてインタビューを行いました。(取材・構成:澤田)

★飯塚高校取材記事第1弾~5年でJ選手輩出!急成長チーム 飯塚高校(福岡県)中辻喜敬監督インタビュー~

中辻 喜敬監督インタビュー

監督プロフィール

中辻 喜敬監督(34歳)
飯塚高校サッカー部監督に2015年就任。
現在6年目。
奈良県平群中→近大附属高校→天理大学
前職は大阪市の中学校教諭。

 

何を目指して強くなるのか?飯塚高校チーム構想

黄色ユニフォームが飯塚高校

ーーまず、新人戦九州大会お疲れ様でした。飯塚高校としては、初となる九州の舞台だったかと思います。近年どんどん戦績を伸ばしている飯塚高校の目標は何でしょうか。

中辻監督
勿論大会での目標は選手権で日本一になることです。ただサッカーの大会だけが目指すべき目標ではないのでそういう意味ではまだ駆け出しです。やっと0が1になったくらいのレベルですね。公式戦で結果を残すことも大事ですが、僕の最終的な目標は飯塚にサッカー文化を作ることです。大人から子どもまでサッカーボールをもっていて週末にはみんながサッカーを観たり、プレーしたり。幼稚園、小学校、中学校の子どもたちには飯塚高校を経てプロを目指す、海外に羽ばたくといった形が定着することが理想ですね。ハード面でも飯塚のどこにいても芝、人工芝でプレーできる環境にしていきたいですし、筑豊にJのクラブもあったら理想ですね。

この地域を目指してどれだけの人たちが入ってきてくれるのか、そしてこの地域の子たちがどうやって成長していくのかが重要であると感じています。その為に飯塚高校はもっと強くならなければいけませんし、Jリーガーを輩出したくらいでは満足できません。飯塚高校からワールドカップで活躍する選手を育成したいです。飯塚といえばサッカーの街だと言われるまでになりたいです。

ーー筑豊エリアのチームとして約半世紀ぶりの新人戦九州大会への出場ということもあり、地元からも期待される声が大きかったと聞いていました。

中辻監督
筑豊はサッカーをやっている人材が他の地域に流出してしまうことが多く、また過疎化も進んでいる地域です。そんな中で筑豊代表のチームとして九州大会に出場できたことは光栄です。結果を出すことや飯塚高校というチームをみてもらうことで地域貢献に繋がっているのであればそれは嬉しいことだと感じます。

約半世紀ぶりとなる九州大会出場へ

決勝リーグにて、大津戦(黄色が飯塚高校)

ーー九州大会の手ごたえはどうだったでしょうか。

中辻監督
2019年度の新人戦九州大会では佐賀東、創成館、神村学園、大津といった普段試合する機会の少ないチームや、まだまだ飯塚高校が弱かった頃から試合をさせていただいていたチームと試合を行いました。対戦したチームそれぞれに感じたことですが、「凄い!」の一言に尽きます。勉強になることばかりでした。毎試合発見がありましたし、僕らとはスタイルが全く違うチームばかりで面白かったですね。

ーー飯塚高校のプレーモデルは?

中辻監督
僕らはプレーモデルではなくゲームモデルと呼んでいます。僕らの理想のサッカーや哲学が普遍的ですが、ゲームモデルは毎年毎年また大会ごとに変わります。今回の新人戦のゲームモデルの話をすると「ポジショニングとボールスキルを駆使し、自らの関係性を強めることで相手との関係性を崩すサッカー」となります。
ゲームモデルと理想のサッカーは違うので、理想を言うとポゼッション100%で相手に勝利することですが、勿論ポゼッション100%なんてありえません。イメージとしては90分間ボールを保持し続けて相手のラインをパスとドリブルで剥がしながら、最終ラインの前で前向きでフリーの選手を作り出し、ペナルティエリアの中を創造性豊かなプレーで突破してキーパーと2対1を作り、横パスをインサイドキックでゴールへ流し込んで1-0で勝利する。これが飯塚高校の掲げる理想のサッカーです。

またサッカーのゲームは勝つためにあります。いいサッカーをしたからOKというのは絶対ありえません。我々が掲げるゲームモデルから言えば、止める、蹴る、運ぶ、奪うという4つの技術が高いことは必須です。どれか一つでも欠けているとよくないです。勿論技術のある子が飯塚には来ていて、理想のサッカー、選手の特徴、システムなど、様々なことを考慮して現在のゲームモデルを採用しています。

大事なことは確かなモデルとプレー原則を持つこと、それを選手に落とし込むことですが、最後は「創造する力」「自由な発想」「個の能力」だと思っています。飯塚高校には本当にタレント力のある子たちが集まってきてくれています。いい選手がいるからこそ我々は理想のサッカーや勝利に近づけると確信しています!我々指導者は選手がいるから存在するということを決して忘れてはいけません。

ーー飯塚高校のサッカーはとても細かいと聞いていますが、それはどんなところですか?

中辻監督

言っていること、やっていることは全国でも一番細かい自信があります(笑)  最高のゲームモデルを構築しても、チームと選手に浸透していなかったら意味はありません。ゲームモデルを選手に浸透させていくにはより具体的で細かくプレー原則を設定してトレーニングで伝えていく必要があります。こんな話をすれば選手をロボットのように扱って選手の自由と創造性を奪っていると言われたりしますが、それは違います。僕はより細かくプレー原則を構築することで、選手に創造性と自由を与えてると思います。

ーーピッチの上ではどんな指導をされているのでしょうか?

中辻監督
我々は日々のトレーニングでプレー原則を落とし込みプレーへのきっかけや基準を与えてます。そのために試合中起こり得るシチュエーションを再現して、各局面のプレー原則をタスク化し、ゲームモデルを落とし込んでいます。具体的に攻撃ではペナルティエリアの手前までのボールの動かし方や選手の関係性をコーディネートしています。最後のゴール前のみ創造性や自由な発想が必要だと考えていますので、僕が教えることができるのは最後のペナルティエリアの手前まで、最後の16.5メートルは選手のタレント力にかかっています。

大事なのは「想像する力」

太宰治の名作『走れメロス』。あらすじや解釈のポイントについて解説 ...

ーー今の子供たちには自由な発想が足りないと言われます。自由な発想にはどんな力が必要なのでしょうか。

中辻監督
感動できる人間力です。今の子どもたちには、たくさん本を読んでもらいたいです。サッカー以外の勉強が感動できる人間力を育むと思います。例えば「走れメロス」を読んだとします。「走れメロス」ではいわゆるメロスは待ってもらった側であり、セリヌンティウスは待っていた側です。セリヌンティウスはメロスが裏切らずに戻ってくると信じており、逆にメロスは信じられているとう使命感もって走ります。どんな気持ちでセリヌンティウスが待ったのだろうか、また信じられているメロスはどんな思いで走ったのか。重要なことは「人」の心の中を想像することだと僕は思っています。

サッカーでいうところの認知、判断、実行というフェーズの中の認知にあたる部分です。スマートフォンの影響もありそこが今の子たちは足りないと感じています。究極の認知は相手の心を観ることです。

ーー監督の言うことを聞かない選手もいますか?

中辻監督
いますよ。僕の指導に対してプレーでNOと言える選手はいい選手だと感じます。
どんな子、どんなチームでもペナルティエリアの手前まではコーディネートすることが出来ます。しかし、その先のペナルティエリアの16.5メートルをどうやって攻略し、点を取るのかはイメージを伝えることはできても教えることは出来ません。そこは選手のアイデアや発想の領域だからです。

飯塚高校大躍進の影にいた「フィクサー」の存在

ーー他の高校と比べて飯塚には専門スタッフが多いと感じます。理由があるのでしょうか?

中辻監督
僕はサッカーの指導は一人でやるものではないという考えをもっています。サッカー部を指導する上でこなすタスクは多様であり、これらを一人でこなすことはとても困難で不可能に近いです。飯塚ではスペシャリストにしっかりと分業をしてもらうことでチームマネジメントを行っています。そんな中でフィクサー※や分析官に該当するスタッフも存在します。

ーー監督やコーチ以外でそういった役割をもったスタッフが活躍しているのですね。

中辻監督
監督ばかりがクローズアップされがちですが 、 世界のサッカーをみてもフィクサーが暗躍しています。監督の近くで常に助言をしているので一度見てみてください。マンチェスターシティもバルサもそうですね。それと同じことを飯塚でもやっています。テクニカルアドバイザーとしてスタッフに入ってもらっている池本浩(リオクロススポーツクラブ枚方/リオクロスサッカークラブ枚方代表)の存在はとても大きいですね。福岡県大会でも池本氏に助言を求めて議論を重ねました。

ーーハーフタイムに前半の分析を聞くことができると聞いたのですが?

中辻監督

前半終了時もそうですが、情報は随時ベンチにいるスタッフに刻々と変わる状況の改善点を伝えてもらってます。試合前に準備しているゲームプランを状況に応じながら、どんな手段を採用した方がいいのか助言を貰っています。福岡県大会、九州新人大会でも全試合における勝てた理由と負けた理由を明確にチーム内でフィードバックすることができています。
戦術には戦術の、フィジカルならフィジカルの各分野に専門性の高いスタッフを置くことで飯塚フットボールは成立しています。飯塚の飛躍の立役者は監督ではなくて、チームを支えてるスタッフなんです。
飯塚高校が強くなるということは筑豊、飯塚のサッカー文化として少しずつ地域に還元されることにも繋がります。その中で福岡県のサッカーの歴史に残る高校でありたい。僕はそう考えています。

※フィクサー(fixer):表に出ないところで活躍してものごとを支える人を指します。サッカーでは陰のブレインのような意味で使われることがあります。

 

「福岡サッカー70年史」で飯塚が語られる日まで

中辻監督
福岡県のサッカーを語り継いでいる「福岡サッカー70年史」というものがあります。これから25年後となる僕が60歳の時までに飯塚高校のサッカーが福岡のサッカーシーンで語られて伝統になっていくことが理想です。ヨハン・クライフのトータルフットボールやアリゴ・サッキが生み出したゾーンプレスのように長い時を超えて語り継がれるようなサッカーを飯塚高校をベースに構築したいです。50年後、飯塚のサッカーは…みたいに語られるようになって欲しいですね。

飯塚高校サッカー部データ

選手

3年生39名
2年生40名
1年生55名
※2020年4月16日現在

スタッフ

【テクニカルスタッフ】
監督 中辻喜敬 飯塚高校教員
部長 島田一真 飯塚高校教員
コーチ 坂口栄毅 飯塚高校職員
コーチ 冨田敦史 飯塚高校教員
コーチ   佐藤元樹   飯塚高校教員
コーチ 山本真嗣 FC LIBRE監督

【アシスタントスタッフ】
トレーナー 田村健一 株式会社トルシーダ
トレーナー 今柳田剛生 Sports Medicin Team-Takao(株)
トレーナー 小西孝彰 小西治療院
テクニカルアドバイザー 池本浩 リオクロススポーツクラブ枚方/リオクロスサッカークラブ枚方代表
クラブアドバイザー 岩佐剛 FC NEO代表

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    最後に

    福岡県の筑豊エリアのサッカー部を取材で回ったのですが、多くの指導者の方々が飯塚高校の台頭はとても嬉しいとおっしゃられていました。飯塚高校の壮大なプロジェクトはまだまだはじまったばかりですが、とても楽しみですね。

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    寄稿者プロフィール

    株式会社グリーンカードWriter澤田
    熊本県出身。動画事業部に所属。
    久々にフットサルをして、体が全然動かないことにびっくりしている今日この頃です。 仕事にも慣れて来たので、今年は体を動かしてボールを蹴ることが目標です!笑
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