(この記事は再掲です)
「視力淘汰」って知っていますか?
視力淘汰…それは、サッカーをやっていこうとするジュニア選手にとって知っておいていただきたい言葉です。
視力淘汰とは、その選手が素晴らしい才能を持つ選手が、その才能を持ちながらも視力不足で脱落していくことです。多くは急激に視力が低下する中学~高校期に起きる現象です。
どうしてサッカーで視力がとやかく言われるのか、視力淘汰が起きてしまうのか?それは、サッカーというスポーツの特性に原因があります。
Jリーガーの半数以上は視力1.5以上
スポーツビジョン研究会が集めたデータがあります。その中では、スポーツごとにプロ選手の視力を集めたデータもあるのですが、Jリーガーの約半分の選手が視力1.5以上です。0.9以下の選手は14%ほどにすぎず、平均視力は1.3でした。
「コンタクトは?」「視力矯正は?」と調べてみましたが、コンタクトなどで視力矯正している選手も全体の15%にすぎません。
つまり、Jリーガーの調査結果によると、約8割強の選手が視力矯正なしで不自由ない視力を持っているというのです。ちなみに、視力1.6以上は42%。一般的な大人と比べても、かなり高いレベルの視力を持っていることがわかります。
「視力が良いからプロ選手」の真実
サッカーは視力矯正が難しいスポーツです。視界が戦況判断、情報判断の鍵となるため、広い視界を持っていることが絶対条件となります。このため、スポーツゴーグルはあまり使用に適しません。
人差し指と親指で輪を作り、目の周りに当ててみてください。その状態での視界は、たいへん狭いものです。その視界では、サッカーに絶対に必要な「ピッチ全体を見回す」ことは、かなり首を振らないとできないはずです。
大きく首を振ると死角が増えます。球技にとって死角は命取り。
スポーツのレベルが上がっていけば行くほど、体力的に、あるいはテクニック的に差は詰まってきます。そこで物を言ってくるのは「頭」だとサッカーでは言われています。「頭」とは「情報処理」のこと。情報の8割は視覚によるものです。
つまり、目が悪い人と目が良い人で同じくらいのテクニックを持っていたら目が良い人のほうがうまいという結果になるということです。
サッカーは22人が入り乱れ、一瞬一瞬で位置関係が変わるスポーツです。情報なしで戦うことは、100%の判断ができなくなるということです。
視力によるパフォーマンスの低下
視力によってどれだけパフォーマンスは変化するのか?を調べるために、センタリングを受けてのボレーシュートのパフォーマンスをしてもらったデータがあります。
選手には、特殊な視力矯正器具をつけてもらって1.2の視力を弱め、人工的に視力を低下させ、見にくくした状態で取ったデータです。
視力1.2を100%のパフォーマンスができる状態とすると、0.7で約80%、0.3で約65%ほど、0.1になると約45%ほどになりました。
つまり、0.7になると本来できるパフォーマンスの80%、0.3になると半分強しか力を発揮できなくなってしまうのです。
ボールが小さければ小さいほど視力は必要になってくるので、一番影響が大きいのは野球です。野球は0.3ではバットに掠ることすらできません。
プロ選手として、あるいはプロでなくてもちゃんと高校、大学までレギュラーとして長くプレーを続けていきたい…そう願うジュニア選手は、もっと視力に関心を持ってほしいのです。
視力は一度低下してしまったらなかなか元には戻りません。
成長期と視力低下
平成27年度の学校保健統計調査で公示された視力1.0未満の割合は以下の通りです。
幼稚園…26.82%
小学生…30.97%
中学生…54.05%
高校生…63.79%
今、お子さんの視力はどのくらいありますか?
今が良くても、中学生になると途端に目が悪くなる事態が起こります。これは、成長期や生活スタイルの変化とも関係します。
第二次成長期を迎えると、背がぐんぐん伸びる現象が起こります。背が伸びるということは、筋肉も、骨も成長していくということです。
中学生の選手を見ていると、ときどき、今までぶつからなかったところに急にぶつかるようになってしまったりする時期があります。これは、急激な身長の伸びや骨や神経、筋肉の成長によってコントロールが一時的に狂う現象です。これはスポーツをしていない子にも見られる現象です。
目は神経と筋肉、眼球によって構成されています。目の神経や筋肉も成長します。この時期に外遊びが減り、家の中で過ごすことが増え、テレビやゲームを長時間見て目の筋肉を固定してしまうことで急激に近視になる人がたくさんいます。
視力を測ってみよう
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ネットで簡単に視力検査をしてみよう!
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さあ、皆さんの視力はどうでしたか?
※正確な診断結果を知りたい方は必ず専門医で検査を受けてくださいね。
視力低下の原因は何?
視力の低下の原因は、以下の通りです。
◆近くのものを凝視している時間が長い
30分以上集中してゲームを続けたり、テレビやパソコンの画面などを長時間見続けたりしてはいけません。
目のピントを合わせているのは、毛様体筋という筋肉です。この筋肉は、近くのものを見続けると収縮し続けて固まってしまうのです。
すると、近くのものしかよくピントが合わない目、つまり「近視」になってしまうのです。
「30分ゲームをしたら、2m離れたテレビを見るようにしているよ!」では、意味がありません。2mは「遠いところ」ではないからです。
アフリカのマサイ族は視力5.0を記録する人も珍しくありません。これは、彼らが遠いところ、何キロも先を見渡しながら生活し、獣に気を配りながら生活しているからです。
日本の住宅は狭いのが視力低下の原因、と唱える説もあるようです。遠いところを診ようと思ったら、外に出るしかありません。
◆同じ姿勢を長時間続ける
同じ姿勢を長く続けていると、肩や首の筋肉が固まります。大人でいう、「肩こり」「首コリ」の状態です。肩、首の筋肉は水晶体のピントを合わせている毛様体筋とも密接な関係を持つとされています。
大人のパソコンのやりすぎで肩が凝るのは、キーパンチの姿勢が悪いからだけではなく、同じ姿勢を長時間取ることが原因だとされています。
視力低下を防ぐ方法は?
基本、物を見るときは30cm以上離して
これは正しい姿勢ともつながります。背中が丸くなると本やゲーム機、パソコンとの距離が近くなります。これは目に負担をかけてしまいます。必ず30㎝以上離しましょう。
暗いところで物を見ない
暗いところで勉強したり、本を読んだりすることは目に負担をかけます。正しい姿勢で明るいところで本を読みましょう。
横になってテレビを見たりするのもよくありません。よく、テレビに向かって垂直に座った状態で(こたつなどを導入している家に多いようです)首を傾けてテレビを見ることもありますが、あれもよくありません。テレビに近いほうの目が近視になってしまうようです。
同じ作業を60分以上続けない
長時間近くを見続けることは毛様体筋に負担をかけます。小学生では60分以上近くを見続けるのは近視の原因になります。
目は2m程度では「近く」と認識します。ゲーム1時間、「近くを見たから遠くを見よう」と言ってテレビ1時間…は、「近くを2時間見た」ということになります。気を付けてください。
外遊びをする
「遠くを見ると目が良くなる」と言いますが、遠くをぼーっと眺めていても視力は良くならないし、回復もしません。
遠く、近くを見てピントを合わせるという練習が一番視力回復に効果があるのです。それが一番効率的にできるのが「外遊び」です。
例えば、鬼ごっこ。ピントを遠く近く合わせ続けないと鬼ごっこはできませんね。それがとても良いトレーニングになるのです。
家のお手伝いをする
「えー!」という声が聞こえてきそうです。が、これは大変良い目のトレーニングになるのです。遠く、近くと、違う距離のところにピントを合わせ続けることが視力を回復することになります。
洗濯ものをたたむ、掃除をする…それらの作業は、すべて「近いところ」ですが、近い中でせわしなく目を動かすことになります。スーパーへのお使いも、トレーニングとしては良いですよ。スーパーで、できるだけ短時間にいろいろなものを買ってくる練習などをするのもよいです。
視力を回復させるには?
眼科での視力回復は難しい
一般的に、眼科での視力回復は難しいといわれています。眼科は、仮性近視がこれ以上ひどくなるのをストップさせる努力はしてくれますが、本来は「目の病気を治療するところ」です。
なので、眼科では「近視を矯正し、生活に支障が出ないようにすること」が大切なのです。仮性近視のトレーニングをしてくれる眼科もありますが、一週間に1回程度、1回5分ほどのトレーニングでは、劇的な回復は見込めません。
生活の中に近視の原因は隠れているので、一週間に5分ではたちうちできません。眼科での治療を続けていらっしゃる方は、ぜひ生活の中でも「遠く、近くにピントを合わせる努力」を継続してください。
「目に効く」サプリメントはジュニアサッカー選手にはNG!
ブルーベリー、アントシアニン、ベータカロチン…「目に効く」サプリメントはたくさん売っていますよね。
でも、スポーツを志すなら、成分不詳のサプリメントを摂取する習慣は絶対につけないでください!
身体に良いもの(でも、詳しくは何が入っているものか知らない)をためらいなく摂取する習慣は、ドーピングにつながる可能性があります。実際、「体調が良くなる」と友達から手渡されたサプリメントが実はドラッグだったという事件もありました。
ちなみに、サプリメントを摂取しても、目の疲労回復には役立つものもありますが、視力回復に役立つものはありません。目の疲れなどで一時的に視力が低下している時には効果があるようですが、近視や乱視などには効果がないようです。
サプリメントは、医薬品ではなく、農林水産省管轄の「食品」です。サプリメントに頼らず、基本的な栄養補給と睡眠が視力低下を防ぎます。
※参考文献は末尾に表示します。
子供の視力を何とかしたい!という保護者の方におすすめの視力回復法3選
ストレッチで視力回復
肩や首のコリが近視の原因になっている、として東洋医学的にアプローチする方法もあります。
毛様体筋のストレッチ、眼球を柔軟にして水晶体の働きをサポートしたり、頭蓋骨をゆるめたりすることによって視力を回復させる方法です。
目のピントを合わせることで視力回復
遠く近くピントを合わせるトレーニングのできるDVD教材です。空間距離の把握にも役立つため、サッカー選手になくてはならない深視力も一緒にトレーニングできるのが特徴の一つです。
パソコン、ゲームのブルーライトをカットして視力低下予防
今や、自宅学習教材にもタブレットが導入されています。ゲームはしないと言ってもタブレットで熱心に学習していたら、「姿勢を固定」と「見ている距離を固定」という、近視の条件がそろってしまうことになります。きちんと休憩を取りながら勉強してください。
タブレット類は、これに加えてブルーライトも視力を低下させる原因になっているといわれています。
子どもにも避けて通れないパソコン、スマホ、タブレット、ゲーム機などから発されるブルーライトをカットし、目にかかる負担を少しでも少なくするように考えられたメガネもあります。
このようなメガネは、ほんの少しの視力矯正が入っているものもあるので、視力が低めのお子さんに向いています。視力が1.0以上のお子さんは、度の入っていないブルーライドカットのメガネをお使いください。
動体視力の鍛え方はこちら
サッカーには静止視力だけではなく動体視力もとっても大事だとご存知でしょうか?「動体視力」がなぜ必要なのか?トレーニング方法は?などなど、徹底調査しました!
参考文献
『目力がスポーツを変える!動体視力トレーニング』(成美堂出版、2008年7月)
最後に
「暗いところで本を読むな」「ゲーム機から目を離せ」「テレビは起きて見なさい」…親ならば、一度は口にしたことがある言葉たちではないでしょうか。
どんなに口で言っても、子どもの左から右へスルーしてしまうものです。しかし、視力は一生もの。一度悪くなってしまうと、回復させるにも大変です。
中学~高校になり、成長しきってしまうと、仮性近視は真性近視となり、治すのが難しくなるようです。どんな方法を使っても、お子さんの「やるぞ!」という意識がなくては続きません。
この記事は、前半を「いかにサッカーには視力が大事か」で構成しました。選手本人の意識付けの一助になればと思っています。
山中千秋様
筆者ではございませんが、横から失礼します。
サッカーに視力が大事なのはもちろんですが、それでプロへの道が途絶えるわけではないですよ。
ちなみに元日本代表の内田篤人さんは0.02です。
キーパーの川島選手も視力悪いです。
まあ、両名ともコンタクトは使用してますが
他にも日本代表クラスでも視力の悪い人はいると思いますよ。
ちなみにもっとボールが小さい野球で
ヤクルト山田哲人選手は0.7ないはずです。それも裸眼でプレーしてます。
目が良いに越したことはないのでしょうが、それが夢を諦める理由にはなりません。
水下真紀様
視力淘汰の記事、とても興味深く読ませて頂きました。
ご質問があるのですが、
ジュニアユース・ユースチームは、所属選手や入学希望者に視力や動体視力などの目の検査を実施して上のチームに上げる参考にしているのでしょうか。
また、視力や動体視力が低下するとレギュラーになれない、次の段階に上がれないといった情報は選手や保護者にきちんと伝えられているのでしょうか。
会社から帰宅する電車の中で、ユニフォームを着た小学生の集団がポータブルゲームやスマホをして遊んでいる風景を思い出しながら記事を読んでいました。
目が悪くなると将来の夢が消えてしまうと知らずに、遊んでいるのだとすると理不尽だと思いまして質問してみました。
お暇なときにご回答頂ければ有難いです。