「トレセン入りを目指している我が子。将来はプロになりたいと言っている。でも今いるチームではちょっと難しいかも・・・」そんな悩みを持つ親御さんは少なからずいます。
子どものサッカー技術を向上させるには、その子のレベルに合わせたベストな環境にそのつど移してあげたほうが効果的と言われています。
チーム内で頭一つ飛び抜けているのなら、よりレベルが高いチームに移籍させ、反対に今いるチームのレベルが高すぎて全くついていけてない子には、その子と同じくらいのレベルの子たちが集まるチームに移籍させる。
そうすることで互いに切磋琢磨されて技術が磨かれていくのだそう。
また、ゴールデンエイジと呼ばれる、サッカー技術が最も大きく向上する時期(U-10〜U-12頃まで)の短さを考えると、いつまでも不満が残る環境に留めておく時間的余裕もありません。
この話を聞くと、「今すぐチームを移籍させなければ!」そう焦りを持つ方もいるでしょう。
ですがちょっと待ってください。その移籍、本当にお子さんの為になっていますか?
親が熱を入れすぎている場合も
サッカーをする子どもが全員プロになりたいわけではありません。単純に楽しいからサッカーをしている子もいます。
しかし、日本の子どもたちの習い事はなぜか、やるからには上を目指さなければならないという傾向が強いように思います。
最初は体力づくりのために始めさせたつもりのサッカーが、つい親のほうが熱中しすぎてしまい、目的がプロ入りに変わってしまうケースも少なくありません。親が熱を入れすぎて起こる問題には、次のようなケースがあります。
・プロ入りを目指すあまり、少しでも現チームに不満があると、子どもの意見を聞かずに簡単に移籍させてしまう。
親の都合で、本人の意思に関係なく所属チームを変えられてしまっては、子どもはたまったものではありませんね。
サッカーは団体競技なので、チームに自分を適合させることが必要です。それにはどうしても時間がかかります。移籍先のチームに馴染めないうちにまた移籍、そんなことを繰り返していると力が伸びないばかりか、サッカー以外の学校生活や私生活にも悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
先走って移籍を考える前に、まずは子どもが今の環境をどう思っているか聞きましょう。「練習は楽しい?」、「仲の良い友達はできた?」、「監督はどんな人?」など、子どもの本音を聞いてあげてください。
「今のチームは楽しいけどもっと強くなりたい。」そんな言葉が出てきたら、そこで初めて移籍を考えるくらいでちょうどいいのです。
チーム移籍をさせるメリット
チームを移籍させるメリットは、競争相手ができて個の能力が向上する、環境の変化に適応する力が身につく、仲の良いチームメイトができる、良い指導者に巡り会える可能性があることです。
人間関係のしがらみもあるので、移籍はそう簡単なことではありませんが、現チームの指導者の性格に問題があって我が子が苦しんでいるようであれば、移籍をさせるメリットは大きいです。
その子にとって最適なチームへの移籍が叶えば、以前よりもサッカーが楽しめるようになるでしょう。
チーム移籍をさせるデメリット
反対に移籍をさせるデメリットとして、移籍先のレベルの高さについていけず自信をなくす、仲の良いチームメイトと離れてしまうことによる孤独感、裏切りや逃げだと中傷されて元チームとの関係が悪化する、厳しすぎる指導者にあたって子どもがつぶされてしまうといった可能性があります。
人間関係を犠牲にして移籍をしたとしても必ずプロになれるわけではありません。プロになれなかったら子どもにとってただの嫌な思い出となるだけです。
また、指導が厳しい=有能な指導者とは限りません。特に専門知識も実績もないのに、サッカーと関係のないトレーニングばかりを課す、ミスをしたときに怒号を飛ばす、レギュラーから外すなどのペナルティーを与えるような監督であれば要注意です。効果が得られないばかりか、サッカーが嫌いになってしまいます。
ですので、事前に移籍させる予定のチームの体制や監督の評判などを調べておき、リスクの大きい移籍をしなくて済むように配慮する必要があります。
では、どのようにしたらリスクの大きな移籍を回避できるのでしょうか?
移籍をさせる場合の注意点
現チームへの不満を言わない
辞める理由を聞かれたときは、現チームに対する不満は言わないほうが無難です。「試合数を増やしてあげたいから」、「移籍先が職場に近いところにあるので子どもに何かあったときにすぐに駆けつけられる」などのポジティブな理由を伝えましょう。
くれぐれも指導方法に対する文句や、チームのレベルが低いからとは言ってはいけません。事を荒立てると監督だけでなく、子どものチームメイトや保護者たちとの関係が一気に悪くなってしまいます。
子どもに不満を言わない
たとえ、現チームに不満があっての移籍だったとしても、お子さん本人にはチームやチームメイト、指導者への不満は言わないようにしましょう。お子さんは、親御さんの評価を信じます。親御さんの意見が自分の意見になってしまうことはよくあります。
プロ選手になった方々のインタビューなどを読んでみると、自分が過去に所属したチームへの不満を述べる選手はいません。「どこへ行ってもすてきなチームでプレーしてきた自分」という意識は、自己評価をアップさせるのに役立ちます。
「移籍すると公式戦に出られない」ってホント?
チームを移っても、所属する都道府県への協会への登録が済んでいなければ公式戦には出られません。アマチュア選手は協会が登録を承認した日から公式戦に出場することができます。(第2章 移籍 第1節第21条の1)
この規定にかかわらず、大会要項(主催協会が定める)に規定があれば、主催協会が選手の出場を制限することができます。
例えば、「移籍から〇カ月はリーグ戦への参加を認めない」などといったケースもあるようです。大会要項はしっかりチェックしましょう。(第2章 移籍 第1節第21条の2)
なお、JFAの規定には、アマチュア選手がアマチュア選手として移籍を希望する場合、移籍元チームは当該移籍を承諾しなければならないと定められています。(第2節 移籍の手続き 第22条)
参照サイト:JFAドキュメント>関連規定>サッカー選手の登録と移籍等に関する規則
チームを移籍させる意思が固まってきた場合、できれば穏便に事を運びたいものですね。
最後に
子どもの運動能力を左右する大事な時期は、同時に人格形成をする大事な時期でもあります。今のチームで楽しくサッカーができており、本人も満足しているのであれば、安易に移籍をしないほうがおすすめです。
また、しばらく様子を見ることで力がぐんと伸びることもありますので、干渉しすぎず見守ることも大切です。でも、熱烈に応援するのはありですよ(笑)
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