*この記事は再掲です
2021年9月、佐賀東高校サッカー部より、新たに2人のJリーガーが誕生!
吉田陣平選手の2022シーズン J2 アルビレックス新潟への入団と、OBの平河悠選手(2021年現在、山梨学院大学サッカー部所属)の2023シーズン J2 FC町田ゼルビアへの加入が内定しました。
佐賀東高校から誕生したプロサッカー選手は、OBを含め、これで合計9人となります。
2001年から20年間に渡り、同校サッカー部を率いる蒲原晶昭監督にお話を伺いました。
蒲原監督の目に映る「伸びていく選手像」とは?
夢を叶えるため、これから佐賀東サッカー部を目指す選手に求めることとは?
(電話取材・文/Crane、イメージ画像参照元/佐賀東高校サッカー部HP)
お話を聞いた人
佐賀東高校サッカー部監督 蒲原晶昭氏
資格・経歴
日本サッカー協会公認A級ライセンス
佐賀県サッカー協会技術委員長
2001年〜 佐賀東高校サッカー部 監督
2019年.2020年 日本高校サッカー選抜監督
参照:佐賀東高校サッカー部HP
吉田陣平選手、平河悠選手(OB)
佐賀東高より新たに2人のJリーガーが誕生
ーーーこのたびは、吉田陣平選手のJ2 アルビレックス新潟入団内定、OBの平河悠選手のJ2 FC町田ゼルビアへの加入内定、おめでとうございます。
プロになったお2人は、佐賀東高校ではどんな選手だったのでしょうか。
佐賀東高校サッカー部 蒲原監督(以下、蒲原)
ありがとうございます。
2人の選手が目標の入り口に立てたことを嬉しく思います。
吉田は佐賀東に入ってきた頃には、既にプロ選手になりたいという明確な目標を持っていました。
スキルもあり、高校入学までの15年間の中でしっかり努力してきたことを感じさせる選手でもありました。
サッカーをしていれば良い時もあれば悪い時もある。
吉田も例外ではないのですが、彼は波を感じさせないというか。
どんな時も平然と立ち振る舞うことのできる、動じない選手だなと思います。
平河はとにかくサッカーが大好きで、コツコツと練習に励むタイプ。
スキルトレーニングもひたすら黙々と、懸命にこなす選手でした。
大学に進んでからも努力を続けたんだと思います。
山梨学院大学という進路が彼にとって最適であったということも感じます。
1年生から試合出場のチャンスを得て、経験を豊富に積めたことが大きかったのではないでしょうか。
大学サッカーという環境で刺激を受けながら技術を磨き、夢を叶えた。
よくぞここまでやってくれたと本当に感心します。
プロになる選手は「ポジティブさ」が違う
ーーー蒲原監督から見て「プロになる選手はここが違う」と思うことは何でしょうか?
蒲原
サッカーだけではなく、人としてあらゆることにポジティブさがある選手は伸びていくと思います。
吉田は学校生活でも積極的で、東高祭(体育大会)で応援団のリーダーをしたこともあります。
考え方がバラバラのメンバーをひとつにまとめるとなると、簡単でないことも多い。
サッカー部などの同じ目標に向かう集団は意識が統一されている分、物事を進めやすいのですが、学校行事となると、サッカー部以外の生徒が殆どで興味が向く事柄も人それぞれです。
取り組み方に温度差が出ることもあるでしょう。
吉田は労を惜しまず様々なことを調整し、応援団のメンバーと共にリーダーとして、全校生徒の前に立ちました。
サッカー以外のことで、色々なタイプの生徒と関わりながら行動したことは、彼に新たな気づきや刺激をもたらしたと思います。
自分の出来ないことを理解し、それを変えるために実際に行動に移すということも大事なことです。
1年生の時、吉田は自らフランスへのサッカー短期留学プログラムを見つけ、行かせて欲しいと言ってきました。
フランス行きのスケジュールは新人戦の真只中でしたが、個が太くなればそれは必ずチームを強くしてくれる。そう思って送り出しました。
体を張ったプレーや、攻守の球際の部分など、強みを増して帰ってきましたね。
「行くからには、何かを得て欲しい」という期待にしっかり応えてくれたと思います。
ひたすらな努力とアウトプットできる環境
蒲原
平河は高校生の時点では「即プロになれるか?」と問われると、まだまだだと感じる選手でした。
佐賀東にとって平河は欠かすことのできない戦力でしたが、全国には同じレベルの選手が山ほどいるのです。
身体的にそこまで大きくなかったということも、プロの観点で言えば、まだまだということだったと思います。
しかし、平河はそこで終わらなかった。
平河が高3の時のインターハイを見た山梨学院大学のコーチから声をかけてもらったんです。
それが転機となって、一度はあきらめかけたプロサッカー選手という夢を叶えるため、平河は山梨学院大への進学を決めました。
この進路が彼を並々ならない努力へと導いたのだと思います。
彼の努力は大変素晴らしいが、試合経験が積めるという環境もまた良かった。
努力を続けられる場所が、自分にとって最適な場所であるということは大きな差を生むと思います。
ひとつは、ひたすらに技術を磨く努力。もうひとつは、努力をアウトプットできる環境。
この2つが揃うということは、大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
「高校生活の3年間が一番きつかった」と思えるように
ーーー今回、Jリーグへの内定が決まったお2人のように、夢を叶えたいという選手が、毎年たくさん佐賀東高校に入部されると思います。これから佐賀東高校を目指す選手達には、どんなことを求めますか?
蒲原
3年間の高校サッカーに覚悟を持って臨んで欲しいということです。
特に、県外から公立の佐賀東高校を目指す場合は県外受験の許可申請に始まり、親元を離れて寮生活を送ることまでを決断しなければなりません。
毎年、3年生が卒部を迎えた時、保護者の方への感謝の気持ちを口にします。
レギュラーとして試合に出られた選手であれば笑顔で。
しかし、試合に出られなかった選手は自分を送り出し、学費を払ってくれた親に申し訳ないと言って泣くのです。
努力しても思い通りにならないこともある。
それが競技の世界の厳しさです。
それでも目指したいと思えるか。
覚悟を持つということはそういうことなのです。
今回プロになった2人も今はまだ、夢の入り口に立っただけに過ぎません。
プロ選手は試合に出続けることを目指さなければならない。
チームの主力として活躍し続けるために、どこまで努力できるのか。
それがこれから問われるのだと思います。
自分が得意な、好きなプレーをやっているだけではいずれ通用しなくなる。
ストロングポイントをいっそう磨きながら、同時に欠点も克服するという貪欲さを持って欲しいですね。
夢を叶えられる選手は一握りかもしれない。
それでも、何かに真剣に向き合い、突き詰めたという経験は、生きていく上で必ずプラスになります。
彼らが、10代、20代という時間を犠牲にして、死に物狂いで得たものは次のステージに持って行くことができるのです。
私は、サッカーだけではなく、人としての成長も部員達に残したいと思っています。
指導者として彼らの人生に関われるのは3年間と限られています。
成長する糸口を自ら掴める人間になってくれるよう、良い環境と刺激を与え続けたい。
その環境と刺激が、佐賀東高校サッカー部そのものと言えるように創り上げていきたいですね。
部員達がいつか自分自身を振り返った時に「高校3年間が一番きつかったが、その経験があったことで、社会人になり、どんな困難もポジティブに乗り越えていける」と思ってくれたら、私の指導は成功だったのではないかと思います。
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最後に
一言ひとこと、噛みしめるようにお話された蒲原監督。
夢を叶えたいという選手たちを応援し、人としての成長を残したいという言葉がとても印象に残りました。
厳しい世界に挑む選手達を厳しく、温かく見守り、真剣に向き合っていることが伝わってくるインタビューでした。
蒲原監督、貴重なお話をありがとうございました。
プロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせる、吉田陣平選手、平河悠選手のご活躍、佐賀東高校サッカー部の益々のご発展をお祈りしています。
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